口腔咽喉薬・うがい薬(含嗽薬)

口腔咽喉薬は、口腔内又は咽頭部の粘膜に局所的に作用して炎症による「痛みや腫れ」などの症状を緩和するもので、トローチ剤やドロップ剤、口腔内に噴霧(スプレー)又は塗布して使用する外用液剤などがあります。
殺菌消毒成分が配合され、口腔及び咽頭の殺菌・消毒などを目的とする製品もあります。
鎮咳成分や気管支拡張成分、去痰成分は配合されていません。
含嗽薬は、口腔及び咽頭の「殺菌・消毒・洗浄、口臭の除去」などを目的として、用時水に希釈するか、溶かしてうがいに用いたり、患部に塗った後に水でうがいする外用液剤です。
これらのほか、胸部や喉の部分に適用することにより、有効成分が体温により暖められて「揮散(蒸発)」し、吸入されることで鼻づまりやくしゃみなどのかぜに伴う諸症状の緩和を目的とする外用剤(塗り薬又は貼り薬)がありますが、現在のところ、医薬品となっている製品はなく、いずれも医薬部外品(鼻づまり改善薬)して製造販売されています。
口腔咽喉薬・含嗽薬に関する一般的な注意事項

トローチ剤やドロップ剤は、有効成分が口腔内や咽頭部に行き渡るよう、口に含んだら噛まずに、ゆっくり溶かすようにして使用されることが重要で、噛み砕いて飲み込んでしまうと効果は期待できません。
噴射式の液剤では、息を吸いながら噴射すると気管支や肺に入ってしまうおそれがあるため、 「軽く息を吐きながら、声を出しながら」噴射することが大切です。
噴射式スプレー「のどぬ~るスプレー」

含嗽薬は、水で薄めたり、溶かして使用するものが多いですが、調製した濃度が濃すぎても薄すぎても効果が十分得られません。
一般的に、薬液を10〜20mL 程度を口に含み、顔を上向きにして咽頭の奥まで薬液が行き渡るようにガラガラを繰り返してから吐き出し、それを数回繰り返すのが効果的なうがいの仕方とされます。
なお、含嗽薬の使用後すぐに食事を摂ると殺菌消毒効果が薄れてしまいます。

口腔咽喉薬・含嗽薬は、口腔内や咽頭における局所的な作用を目的とする医薬品ですが、成分の一部が口腔や咽頭の粘膜から吸収されて循環血液中に入りやすく、全身的な影響を生じることがあるため、配合成分によっては注意が必要です。
特に、口内炎などにより口腔内にひどいただれがある人では、刺激感などが現れやすいほか、循環血流中への移行による全身的な影響も生じやすくなります。
代表的な配合成分と主な副作用

一般用医薬品の口腔咽喉薬や含嗽薬には「咽頭部の炎症を和らげる成分」と殺菌消毒成分」などを組み合わせて配合されています。
なお、有効成分が
- 生薬成分
- グリチルリチン酸二カリウム
- セチルピリジニウム塩化物
などのみからなる製品で、効能・効果が「痰、喉の炎症による声がれ、喉の荒れ、喉の不快感、喉の痛み、 喉の腫れ、口腔内や喉の殺菌・消毒・洗浄又は口臭の除去」の範囲に限られるものについては、 医薬部外品として扱われています。
炎症を和らげる成分(抗炎症成分)

声がれ、喉の荒れ、喉の不快感、喉の痛み又は喉の腫れの症状を鎮めることを目的として
- グリチルリチン酸二カリウム
- トラネキサム酸
などの抗炎症成分が用いられます。
炎症を生じた粘膜組織の修復を促す作用を期待して、アズレンスルホン酸ナトリウム(水溶性アズレン)が配合されている場合もあります。
浅田飴「水溶性アズレンうがい薬」

殺菌消毒成分

口腔内や喉に付着した細菌などの微生物を死滅させたり、増殖を抑えることを目的として
- セチルピリジニウム塩化物
- デカリニウム塩化物
- ベンゼトニウム塩化物
- ポビドンヨード
- ヨウ化カリウム
- ヨウ素
- クロルヘキシジングルコン酸塩
- クロルヘキシジン塩酸塩
- チモール
などが用いられます。
「ヨウ素系殺菌消毒成分」又は「クロルヘキシジングルコン酸塩」若しくはクロルヘキシジン塩酸
塩が配合されたものでは、まれに ショック(アナフィラキシー)ような全身性の重篤な副作用を生じることがあります。
これらの成分に対するアレルギーの既往歴がある人では、使用を避ける必要があります。
ヨウ素系殺菌消毒成分が口腔内に使用される場合、結果的にヨウ素の摂取につながり、甲状腺におけるホルモン産生に影響を及ぼす可能性があります。

バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患の診断を受けた人では、その治療に悪影響(治療薬の効果減弱など)を生じるおそれがあるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。
妊娠中に摂取されたヨウ素の一部は「血液-胎盤関門」を通過して胎児に移行するため、長期間にわたって大量に使用された場合には、胎児にヨウ素の過剰摂取による甲状腺機能障害を生じるおそれがあります。
また、摂取されたヨウ素の一部が乳汁中に移行することも知られており、 母乳を与える女性では、同様に留意される必要があります。

このほか、ヨウ素系殺菌消毒成分については、「口腔粘膜の荒れ、しみる、灼熱感、悪心(吐きけ)」などの不快感の副作用が現れることがあります。
また、ポビドンヨードが配合された含嗽薬では、 その使用によって銀を含有する歯科材料(義歯など)が変色することがあります。
クロルヘキシジングルコン酸塩が配合された含嗽薬については、口腔内に傷やひどいただれのある人では、強い刺激を生じるおそれがあるため、使用を避ける必要があります。
局所保護成分
喉の粘膜を刺激から保護する成分としてグリセリンが配合されている場合があります。

日本薬局方収載の「複方ヨード・グリセリン」は、グリセリンに
- ヨウ化カリウム
- ヨウ素
- ハッカ水
- 液状フェノール
などを加えたもので、喉の患部に塗布して殺菌・消毒に用いられます。
抗ヒスタミン成分

咽頭の粘膜に付着したアレルゲンによる喉の不快感などの症状を鎮めることを目的として、 口腔咽喉薬に「クロルフェニラミンマレイン酸塩」のような抗ヒスタミン成分が配合されている場合があります。
この場合、鎮咳去痰薬のように、咳に対する薬効を標榜することは出来ません。
咽頭における局所的な作用を目的として配合されるが、結果的に抗ヒスタミン成分を経口的に摂取することとなり、内服薬と同様な副作用が現れることがあります。
生薬成分

ラタニア
クラメリア科のクラメリア・トリアンドラ及びその同属植物の根を基原とする生薬で、咽頭粘膜をひきしめる収斂作用により炎症を抑えます。
ミルラ
カンラン科のミルラノキなどの植物の皮部の傷口から流出して凝固した樹脂を基原とする生薬で、咽頭粘膜をひきしめる収斂作用のほか、抗菌作用も期待して用いられます。
その他
芳香による清涼感などを目的として
- ハッカ(シソ科のハッカの地上部を基原とする生薬)
- ウイキョウ(セリ科のウイキョウの果実を基原とする生薬)
- チョウジ(フトモモ科のチョウジの蕾を基原とする生薬)
- ユーカリ(フトモモ科のユーカリノキ又はその近縁植物の葉を基原とする生薬)
などから得られた精油成分が配合されている場合があります。
漢方処方製剤

主として喉の痛みなどを鎮めることを目的とし、咳や痰に対する効果を標榜しない漢方処方製剤として
- 桔梗湯
- 駆風解毒散
- 駆風解毒湯
- 白虎加人参湯
- 響声破笛丸
などがあります。
これらはいずれも構成生薬としてカンゾウを含みます。
桔梗湯

桔梗湯は、体力に関わらず、広く使用できます。
喉が腫れて痛み、ときに咳がでるものの扁桃炎、扁桃周囲炎に適すとされますが、胃腸が弱く下痢しやすい人では、食欲不振、胃部不快感 等の副作用が現れやすい等、不向きとされます。
駆風解毒散
駆風解毒散及び駆風解毒湯は体力に関わらず使用出来、喉が腫れて痛む、扁桃炎、扁桃周囲炎に適すとされますが、体の虚弱な(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人で は、食欲不振、胃部不快感等の副作用が現れやすいなど、不向きとされます。
水又はぬるま湯に 溶かしてうがいしながら少しずつゆっくり服用するのを特徴とします。
駆風解毒湯

駆風解毒湯はトローチ剤もあります。
5〜6回服用しても症状の改善がみられない場合には、扁桃炎や扁桃周囲炎から細菌などの二次感染を生じている可能性もあるので(特に、高熱を伴う場合)漫然と使用を継続せずにいったん使用を中止して、医師の診療を受ける必要があります。
白虎加人参湯

体力中等度以上で、熱感と口渇が強いものの喉の渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚の痒みに適すとされますが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸虚弱で冷え症の人では、食欲不振、胃部不快感等の副作用が現れやすいなど、不向きとされます。
響声破笛丸

体力に関わらず広く使用できます。
しわがれ声、咽喉不快に適すとされますが、胃腸が弱く下痢しやすい人では、食欲不振、胃部不快感などの副作用が現れやすいなど、不向きとされます。
なお、漫然と使用を継続することは避け、5〜6日間使用して症状の改善がみられない場合には、いったん使用を中止して専門家に相談がなされることが望ましい。
構成生薬としてダイオウを含む場合があります。
相互作用

ヨウ素は、レモン汁やお茶などに含まれるビタミンCなどの成分と反応すると脱色を生じて殺菌作用が失われるため、ヨウ素形殺菌消毒成分が配合された含嗽薬では、そうした食品を摂取した直後の使用や混合は避けることが望ましい。
受診勧奨

飲食物を飲み込むときに激しい痛みを感じるような場合には、扁桃蜂巣炎(扁桃回りの組織が細菌の感染により炎症を起こした状態)や扁桃膿瘍(扁桃の部分に膿が溜まっ た状態)などを生じている可能性もあり、早期に医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
声がれ、喉の荒れ、喉の不快感、喉の痛みなどの症状は、かぜの症状の一部として起こることが多く、通常であれば、かぜの寛解とともに治まります。
喉を酷使したりしていないにもかかわらず症状が数週間以上続く場合には、喉頭癌などの重大な疾患が原因となっている可能性もあるので、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。

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