【分かりやすさNo.1】胃薬 登録販売者試験(改訂版)解説!

登録販売者試験解説
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胃の薬(制酸薬・健胃薬・消化薬)

胃の不調と薬が症状を抑える仕組み

胃の働きに異常が生じると

  • 胃液の分泌量の「増減」
  • 胃酸の食道への「逆流」
  • 胃液から胃を保護する働きの「低下」

から、胸やけ、胃部不快感、消化不良、胃もたれ、食欲不振などの症状が現れます。

また、胃の働きに異常を生じていなくても「食べすぎ」などで、食べたものを消化する働きが追いつかない時には、腹部に「胃もたれ」などの不調を感じる場合もあります。

吐きけや嘔吐は、延髄にある嘔吐中枢の働きによって起こります。

嘔吐中枢が刺激される経路はいくつかありますが、

消化管での刺激が副交感神経系を通じて嘔吐中枢を刺激することによって「吐きけ」が起きる場合があります。

また、胃の痙攣などによって吐き気が起きることもあります。

配合される成分とその働き

一般用医薬品の胃腸薬は、様々な症状に幅広く対応できるように「制酸、胃粘膜保護、健胃、消化、整腸、鎮痛鎮痙、消泡」など、複数の成分を組み合わせた製品(いわゆる総合胃腸薬)がほとんどです。

制酸薬

制酸薬は胃液の分泌亢進による胃酸過多や、それに伴う胸焼け、腹部の不快感、吐きけなどの症状を緩和するための医薬品です。

その配合成分としては、「胃酸の働きを弱めるの(制酸剤)」「胃液の分泌を抑えるもの(H2ブロッカーなど)」などが用いられます。

健胃薬

健胃薬は、弱った胃の働きを高めて胃を元気にすることを目的としています。

生薬成分

生薬成分は独特の香り(主に苦味など)が、唾液胃液の分泌を促して胃の働きを活発にする作用があるとされています。

消化薬

消化薬は「炭水化物、脂質、タンパク質」などの分解に働く消化酵素を補うことにより、胃や腸の内容物の消化を助ける医薬品です。

制酸と健胃のように相反する作用を期待するものが配合されている場合もありますが、総じて効果がもたらされると考えられています。

胃腸薬を選ぶ際の注意点

消化不良、胃痛、胸やけなど症状がはっきりしている場合は「症状に合った成分のみ(健胃生薬のみなど)」が配合された商品が選択されることが望ましいと言えます。

医薬部外品

健胃薬、消化薬、整腸薬又はそれらの目的を併せ持つものの中には、医薬部外品として製造販売されている製品もあります。

ただし、それらは人体に対する作用が緩和なものとして、配合できる成分やその上限量が定められていて、効能・効果の範囲も限定されています。

代表的な配合成分

制酸成分

中和反応によって胃酸の働きを弱めること(制酸)を目的として

  • 炭酸水素ナトリウム (重曹)
  • 乾燥水酸化アルミニウムゲル
  • ジヒドロキシアルミニウムモノアセテート等のアルミニウムを含む成分
  • ケイ酸マグネシウム
  • 酸化マグネシウム
  • 炭酸マグネ シウム等のマグネシウムを含む成分
  • 合成ヒドロタルサイト
  • メタケイ酸アルミン酸マグ ネシウム等のアルミニウムとマグネシウムの両方を含む成分
  • 沈降炭酸カルシウム
  • リン酸水素カルシウムなどのカルシウムを含む成分

又はこれらの成分を組み合わせたものなどが配合されている場合があります。

メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、胃酸の中和作用のほか、 胃粘膜にゼラチン状の皮膜を形成して保護する作用もあるとされます。

また、ボレイ(イボタガキ科の牡蠣の貝殻を基原とする生薬)などの生薬成分も、それらに含まれる炭酸カルシウムによる作用を期待して用いられます。

制酸成分の注意点

これらの制酸成分を主体とする胃腸薬については、酸度の高い食品と一緒に使用すると胃酸に対する中和作用が低下することが考えられるため、炭酸飲料などでの服用は適当でありません。

制酸成分のうちアルミニウムを含む成分については、透析療法を受けている人が長期間、服用した場合にアルミニウム脳症及びアルミニウム骨症を引き起こしたとの報告があり、 透析療法を受けている人では使用を避ける必要があります。

また、透析治療を受けていない人でも、長期連用は避ける必要があります。

腎臓病の診断を受けた人では

  • ナトリウム
  • カルシウム
  • マグネシウム
  • アルミニウム

などの無機塩類排泄が遅れたり、体内に貯留しやすくなるため、使用する前にその適否につき、 治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

制酸成分は他の医薬品(かぜ薬、解熱鎮痛薬など)でも配合されていることが多く、併用によって制酸作用が強くなりすぎる可能性があるほか、高カルシウム血症高マグネシウム血症などを生じるおそれがあるため、同種の無機塩類を含む医薬品との相互作用に注意する必要があります。

また、カルシウム、アルミニウムを含む成分については止瀉薬(下痢止め薬)、マグネシウムを含 む成分については瀉下薬(便秘薬)に配合される成分でもあり、それぞれ便秘、下痢などの症状に注意することも重要です。

健胃成分

苦味などの味覚や桂皮(シナモン)などのすーっとした香りで嗅覚を刺激して反射的な唾液胃液の分泌を促すことにより、弱った胃の働きを高めることを目的として「オウバク、オウレン、センブリ、ゲンチアナ、リュウタン、ケイヒ、 ユウタン」の生薬成分が配合されている場合があります。

これら生薬成分が配合された健胃薬は、散剤をオブラートで包むなど、味や香りを遮蔽(しゃへい)して服用すると効果が期待できません。

オウバク・オウレン

キハダの樹皮を剥がす作業。
  • オウバクミカン科のキハダ又はPhellodendron chinense Schneiderの周皮を除いた樹皮を基原とする生薬)
  • オウレンキンポウゲ科のオウレン、Coptis chinensis Franchet、Coptis deltoidea C.Y. Cheng et Hsiao 又は Coptis teeta Wallich又はコプティス・テータの根をほとんど除いた根茎を基原とする生薬)

は、いずれも苦味よる健胃作用を期待して用いられます。

日本薬局方収載のオウバク末(オウバクを粉末にしたもの)、オウレン末は、止瀉薬(下痢止め薬)としても用いられます。

センブリ

リンドウ科のセンブリの開花期の全草を基原とする生薬で、苦味による健胃作用を期待して用いられます。

日本薬局方収載のセンブリ末は、健胃薬のほか止瀉薬(下痢止め薬)としても用いられます。

千回振り出しても(振り出すとは、熱湯の中に薬草を浸して成分を溶かし込むこと)まだ苦いということで千振(せんぶり)という名前の由来になっています。

ゲンチアナ・リュウタン

ゲンチアナ(リンドウ科のGentiana lutea Linnéの根及び根茎を基原とする生薬)

リュウタン(リンドウ科のトウリンドウなどの根及び根茎を基原とする生薬)は、いずれも苦味による健胃作用を期待して用いられます。

ユウタン

熊胆と書いて「ユウタン」と読みます。 熊胆とは「ツキノワグマ」「ヒグマ」の胆嚢です。

クマ科のUrsus arctos Linné又はその他近縁動物の胆汁を乾燥したものを基原とする生薬で、苦味による健胃作用を期待して用いられるほか、消化補助成分として配合される場合もあります。

同様の作用を期待して、ウシなどに由来する動物胆が用いられることもあります。

ケイヒ (シナモン)

シナモンでおなじみ。クスノキ科トンキンニッケイやその他同属植物の樹皮を乾燥したもの。

クスノキ科のCinnamomum cassia J. Preslの樹皮又は周皮の一部を除いたものを基原とする生薬で、香りによる健胃作用を期待して用いられます。

その他

雲州ミカンの果皮。

香りによる健胃作用を期待して用いられる生薬(芳香性健胃生薬)して

  • コウボク(モクレン科のホオノキ、Magnolia officinalis Rehder et Wilson 又は Magnolia officinalis Rehder et Wilson var. biloba Rehder et Wilsonなどの樹皮を基原とする生薬)
  • ショウキョウ(ショウガ科のショウガの根茎を基原とする生薬)
  • チョウジ(フトモモ科のチョウジの蕾を起源とする生薬)
  • チンピ(ミカン科の温州みかんの成熟した果皮を基原とする生薬)
  • ソウジュツ(キク科のホソバオケラ、シナオケラ等、又はそれらの種間雑種の根茎を基原とする生薬)
  • ビャクジュツ(キク科のオケラの根茎(和ビャクジュツ)又はオオバナオケラの根茎(唐ビャクジュツ)を基原とする生薬
  • ウイキョウ
  • オウゴン

が配合されている場合があります。

味覚や嗅覚に対する刺激以外の作用による健胃成分として、乾燥酵母カルニチン塩化物が配合されている場合があります。

乾燥酵母は、胃腸の働きに必要な栄養素を補給することにより胃の働きを高めるものと考えられています。

カルニチン塩化物は、生体内に存在する有機酸の一種であり、その働きは必ずしも明らかにされていませんが、「胃液分泌を促す、胃の運動を高める、胃壁の循環血流を増す」などの作用があるとされ、胃の働きの低下や食欲不振の改善を期待して、胃腸薬や滋養強壮保健薬に用いられます。

消化成分

炭水化物、脂質、タンパク質、繊維質などよ分解に働く酵素を補うことを目的として

  • ジアスターゼ
  • プロザイム
  • ニューラーゼ
  • リパーゼ
  • セルラーゼ又はその複合酵素(ビオジア スターゼ、タカヂアスターゼ)

などが配合されている場合があります。

「胆汁末や動物胆(ユウタンを含む)、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸」は、胆汁の分泌を促す作用(利胆作用)があるとされ、脂肪の消化を助ける効果を期待して用いられます。

これらの成分は肝臓の働きを高める作用もあるとされますが、肝臓病の診断を受けた人ではかえって症状を悪化させるおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医 師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

その他の成分

胃粘膜保護・修復成分

「胃粘液の分泌を促す」「胃粘膜を覆って胃液による消化から保護する」「荒れた胃粘膜の修復を促す」など作用を期待して

  • アズレンスルホン酸ナトリウム(水溶性アズレン)
  • アルジオキサ
  • スクラルファート
  • ゲファルナート
  • ソファルコン
  • テプレノン
  • セトラキサート塩酸塩
  • トロキシピド
  • 銅クロロフィリンカリウム
  • 銅クロロフィリンナトリウム
  • メチルメチオニンスルホニウムクロライド

など配合されている場合があります。

このほか、胃粘膜保護作用を期待して「アカメガシワ(トウダイグサ科のアカメガシワの樹皮を基原とする生薬)」など生薬成分も用いられます。

これらのうち

  • アルジオキサ(アラントインと水酸化アルミニウムの複合体)
  • スクラルファート

アルミニウムを含む成分であるため、透析を受けている人では使用を避ける必要があります。

透析治療を受けていない人でも、長期連用は避ける必要があります。

また、 腎臓病の診断を受けた人では、アルミニウムが体内に貯留しやすいため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきである。

ソファルコンテプレノンについては、まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがありますので、肝臓病の診断を受けた人では、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきであります。

テプレノンについては、その他の副作用として腹部膨満感、吐きけ、腹痛、頭痛、皮下出血、便秘、下痢、口渇が現れることがあります。

セトラキサート塩酸塩は、体内で代謝されてトラネキサム酸を生じることから、「血栓のある人」「血栓を起こすおそれのある人」では、生じた血栓が分解されにくくなることが考えられるので、使用する前にその適否につき、治療を行って いる医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

胃粘膜の炎症を和らげる成分(抗炎症成分)

胃粘膜の炎症を和らげることを目的として

  • グリチルリチン酸二カリウム
  • グリチルリチン酸ナトリウム
  • グリチルリチン酸モノアンモニウム
  • カンゾ ウ

などが配合されている場合があります。

消泡成分

消化管内容物中に発生した気泡の分離を促すことを目的として、「ジメチルポリシロキサン(別名ジメチコン)」が配合されている場合があります。

胃液分泌抑制成分

胃液の分泌は副交感神経系からの刺激によって亢進することから、「過剰な胃液の分泌を抑える」作用を期待して、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンの働きを抑えるロートエキスピレンゼピン塩酸塩が配合されている場合があります。

これらの成分を含有する胃腸薬では、胃腸鎮痛鎮痙薬乗り物酔い防止薬との併用を避ける必要があります。

ピレンゼピン塩酸塩は、「消化管の運動にはほとんど影響を与えずに」胃液の分泌を抑える作用を示すとされます。

しかし、消化管以外では一般的な抗コリン作用のため、排尿困難、動悸、目のかすみの副作用を生じることがあります。

「排尿困難の症状がある人、緑内障の診断を受けた人」では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、 治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

また、使用後は乗物又は機械類の運転操作を避ける必要があります。

なお、まれに重篤な副 作用としてアナフィラキシーを生じることがあります。

漢方処方製剤

胃の不調を改善する目的で用いられる漢方処方製剤としては、安中散、人参湯、平胃散、六君子湯などあります。

これらはいずれも構成生薬としてカンゾウを含みます。

安中散

体力中等度以下で腹部は力がなくて、胃痛又は腹痛があって、ときに胸やけや、げっぷ、胃もたれ、食欲不振、吐きけ、嘔吐、などを伴うものの神経性胃炎、慢性胃炎、胃腸虚弱に適すとされます。

「クラシエ」漢方安中散料エキス顆粒S

人参湯

体力虚弱で、疲れやすく手足などが冷えやすいものの胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹 痛、急・慢性胃炎に適すとされます。

下痢又は嘔吐に用いる場合には、漫然と長期の使用は避 け、1週間位使用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に 相談がなされるべきです。

人参湯エキス顆粒「クラシエ」

平胃散

体力中等度以上で、胃がもたれて消化が悪く、ときに吐き気、食後に腹が鳴って下痢の傾向のあるものの、食べすぎによる胃のもたれ、急・慢性胃炎、消化不良、食欲不振に適すとされます。

急性胃炎に用いる場合には、漫然と長期の使用は避け、5〜6回使用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談がなされるなどの対応が必要です。

平胃散エキス顆粒「クラシエ」

六君子湯

体力中等度以下で、胃腸が弱く食欲がなくみぞおちがつかえて疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐に適すとされます。

まれに重篤な副作用として、肝機能障害を生じることが知られています。

六君子湯(りっくんしとう)クラシエ

受診勧奨

一般用医薬品の胃薬(制酸薬、健胃薬、消化薬)は、基本的に、一時的な胃の不調に伴う諸症状を緩和する目的で使用されるものであり

  • 慢性的に胸やけや胃部不快感、胃部膨満感などの症状が現れる
  • 医薬品を使用すると症状が治まるが、やめると症状がぶり返すので医薬品が手放せない

ような場合には「食道裂孔ヘルニア、胃・十二指腸潰瘍、胃ポリープ」などを生じている可能性も考えられ、医療機関を受診するなどの対応が必要です。

制酸薬は、胃内容物の刺激によって分泌促進される胃液分泌から胃粘膜を保護することを目的として、食前又は食間に服用することとなっているものが多いですが、暴飲暴食による胸やけ、吐きけ(二日酔い・悪酔いのむかつき、嘔気)、嘔吐などの症状を予防するものではありません。

  • 腹八分目を心がける
  • 良く噛かんでゆっくりと食べる
  • 香辛料やアルコール、カフェインなどを多く含む食品の摂取を控えめにする

など、生活習慣の改善が図られることも重要です。

嘔吐に「発熱や下痢、めまいや興奮を伴う場合、胃の中に吐くものがないのに吐きけが治まらない場合」などには、医療機関を受診するなどの対応が必要です。

特に、乳幼児高齢者で嘔吐が激しい場合には、脱水症状を招きやすく、また、吐瀉物が気道に入り込んで呼吸困難を生じることもあるため、医師の診療を受けることが優先されるべきです。

胃の薬の服用方法

胃の薬は、健胃成分、消化成分、制酸成分などが、その治療目的に合わせて組み合わされますが、消化を助け、胃もたれを改善し、胃をすっきりさせる効果を主とする製剤は、食後服用のものが多いと言えます。

空腹時や就寝時の胸やけ、ストレスによる胃酸の出すぎなどを抑える効果を主とする製剤は、食間や就寝前の服用のものが多くなっています。

どちらの効果も有する製剤では、食後又は食間の服用指示のものが多くなっています。

症状により製剤を選択する場合は、その症状のひどい時間を確認して、製剤の服用方法も参考にして選択すると良いでしょう。

また、医療機関で処方された医療用医薬品を服用している場合は、副作用による胃の不快感を防止
するために胃の薬も処方されている場合もあるので、販売時には胃の薬が処方されていないかを必ず確認する必要があります。


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