【分かりやすさNo.1】痔に用いる薬 登録販売者試験(改訂版)解説

登録販売者試験解説
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痔の薬

痔の発症と対処、痔疾用薬の働き

主な痔の種類

痔は、肛門付近の血管がうっ血して、肛門に負担がかかることによって生じる肛門の病気の総称で、痔核裂肛痔瘻(じろう)があります。

痔核は、肛門に存在する細かい血管群が部分的に拡張し、肛門内にいぼ状の腫れが生じたもので、一般に「いぼ痔」と呼ばれます。

便秘や長時間同じ姿勢でいると、肛門部に過度の圧迫をかけることが、痔核の主な原因とされています。

直腸粘膜と皮膚の境目となる歯状線より上部の、直腸粘膜にできた痔核を内痔核と呼びます。

直腸粘膜には知覚神経が通っていないため、自覚症状が少ないことが内痔核の特徴です。

排便時に、肛門から成長した痔核がはみ出る脱肛、出血などの症状が現れます。

一方、歯状線より下部の肛門の出口側にできた痔核を外痔核と呼びます。

外痔核は排便と関係なく、出血や患部の痛みを生じます。

裂肛は一般的に切れ痔呼ばれ、肛門の出口からやや内側の上皮に傷が生じた状態です。

裂肛は、便秘などで硬くなった糞便を排泄する際や、下痢の便に含まれる多量の水分が肛門の粘膜に浸透して炎症を起こしやすくなった状態で、勢いよく便が通過する際に粘膜が傷つけられることで生じます。

痔瘻は、肛門内部に存在する肛門腺窠と呼ばれる小さなくぼみに、糞便のカスが溜まって炎症・化膿を生じた状態で、体力低下などで抵抗力が弱まっている時に起こりやすいと言われています。

炎症・化膿が進行すると、肛門周囲の皮膚部分から膿(うみ)が溢れ、その膿により周辺部の皮膚がかぶれ、赤く腫れて激痛を生じます。

痔の原因と予防方法

痔は肛門部に過度の負担をかけることやストレスなどによって生じる生活習慣病です。

長時間座るのを避け、軽い運動によって血行を良くすることが痔の予防につながります。

また、食物繊維の摂取を心がけるなど、便秘を避けることや香辛料などの刺激性のある食べ物を避けることなども痔の予防に効果的です。

痔疾用薬の種類

一般用医薬品の痔疾用薬には、肛門部又は直腸内に適用する外用薬(外用痔疾用薬)と、内服して使用する内用薬(内用痔疾用薬)があります。

いずれも、その使用と併せて、痔を生じた要因となっている生活習慣の改善も重要です。

外用痔疾用薬は、痔核いぼ痔)又は裂肛切れ痔)による痛み、痒み、腫れ、出血などの緩和、 患部の消毒を目的とする坐剤軟膏剤(注入軟膏を含む)です。

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内用痔疾用薬は、比較的緩和な抗炎症作用血行改善作用を目的とする成分のほか、瀉下整腸成分などが配合されたもので、外用痔疾用薬と併用すると効果的なものです。

外用痔疾用薬の主な11成分

外用痔疾用薬は局所に適用されるものですが、坐剤及び注入軟膏では、成分の一部が直腸粘膜から吸収されて循環血液中に入りやすく、全身的な影響を生じることがあるため、配合成分によっては注意する必要があります。

① 局所麻酔成分

局所麻酔成分は、皮膚や粘膜などの局所に使用されると、その周辺の知覚神経に作用して刺激の神経伝達を遮断する作用を示します。

痔に伴う痛み・痒みを和らげることを目的として

  • リドカイン
  • リドカイン塩酸塩
  • アミノ安息香酸エチル
  • ジブカイン塩酸塩
  • プロカイン塩酸塩

などの局所麻酔成分が使用されます。

  • リドカイン
  • リドカイン塩酸塩
  • アミノ安息香酸エチル
  • ジブカイン塩酸塩

が配合された坐剤及び注入軟膏では、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じることがあります。

② 抗ヒスタミン成分

痔のかゆみを和らげることを目的として

  • ジフェンヒドラミン塩酸塩
  • ジフェンヒドラミン
  • クロルフェニラミンマレイン酸塩

などの抗ヒスタミン成分が配合されている場合があります。

③ 局所刺激成分

局所への穏やかな刺激によって痒みを抑える効果を期待して

  • 熱感刺激を生じさせるクロタミトン
  • 冷感刺激を生じさせるカンフルメントールハッカ油(シソ科ハッカの地上部を水蒸気蒸留して得た油を冷却、固形分を除去した精油)

などが配合されている場合があります。

④ ステロイド性抗炎症成分

痔による肛門部の炎症や痒みを和らげる成分として

  • ヒドロコルチゾン酢酸エステル
  • プレドニゾロン酢酸エステル

などのステロイド性抗炎症成分が配合されている場合があります。

なお、ステロイド性抗炎症成分が配合された坐剤及び注入軟膏では、その含有量によらず長期連用を避ける必要があります。

⑤ グリチルレチン酸

比較的緩和な抗炎症作用を示す成分として「グレチルが配合されている場合があります。

グリチルレチン酸はグリチルリチン酸が分解されてできる成分で、グリチルリチン酸と同様に作用します。

⑥ 組織修復成分

痔による肛門部の創傷の治癒を促す効果を期待して、アラントインアルミニウムクロムヒドロキシアラントイネート(別名アルクロキサ)ような組織修復成分が用いられます。

⑦ アドレナリン作動成分

血管収縮作用による止血効果を期待して

  • テトラヒドロゾリン塩酸塩
  • メチルエフェドリン塩酸塩
  • エフェドリン塩酸塩
  • ナファゾリン塩酸塩

などのアドレナリン作動成分が配合されていることがあります。

メチルエフェドリン塩酸塩が配合された坐剤及び注入軟膏ついては、交感神経系に対する刺激作用によって心臓血管系や肝臓でのエネルギー代謝なども影響を生じることが考えられ、心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能障害の診断を受けた人では、症状を悪化させるおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は 処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

高齢者では、心臓病や高血圧、糖尿病の基礎疾患がある場合が多く、また、一般的に心悸亢進や血圧上昇、血糖値上昇を招きやすいので、使用する前にその適否を十分考慮し、使用する場合にはそれらの初期症状などに常に留意するなど、慎重な使用が重要です。

⑧ 収斂保護止血成分

粘膜表面に不溶性の膜を形成することにより、粘膜の保護止血を目的として

  • タンニン酸
  • 酸化亜鉛
  • 硫酸アルミニウムカリウム
  • 卵黄油

などが配合されている場合があります。

タンニン酸については、ロートエキス・タンニン坐剤や複方ロートエキス・タンニン軟膏のように、鎮痛鎮痙作用を示すロートエキスと組み合わせて用いられることもあります。

⑨ 殺菌消毒成分

痔疾患に伴う局所の感染防止を目的として

  • クロルヘキシジン塩酸塩
  • セチルピリジニウム塩化物
  • ベンザルコニウム塩化物
  • デカリニウム塩化物
  • イソプロピルメチルフェノール

などの殺菌消毒成分が配合されている場合があります。

⑩ 生薬成分

シコン

ムラサキ科のムラサキの根を基原とする生薬で、新陳代謝促進、殺菌、抗炎症などの作用を期待して用いられます。

セイヨウトチノミ(セイヨウトチノキ種子)

トチノキ科のセイヨウトチノキ(マロニエ)の種子を基原とする生薬で、血行促進抗炎症などの作用を期待して用いられます。

⑪ ビタミン成分

肛門周囲の末梢血管の血行を改善する作用を期待してビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)、傷の治りを促す作用を期待してビタミンA油などが配合されている場合があります。

内用痔疾用薬

内用痔疾用薬は、生薬成分を中心として、以下のような成分を組み合わせて配合されています。

痔に伴う症状の緩和を目的として、センナ(又はセンノシド)ダイオウ、カンゾウ、ボタ ンピ、トウキ、サイコ、オウゴン、セイヨウトチノミ、カイカ、カイカクなどの生薬成分が配合されています。

オウゴン・セイヨウトチノミ

オウゴンはシソ科のコガネバナの周皮を除いた根を基原とする生薬、セイヨウトチノミはトチノキ科のセイヨウトチノキ(マロニエ)の種子を用いた生薬で、いずれも主に抗炎症作用を期待して用いられます。

カイカ・カイカク

カイカはマメ科のエンジュの蕾を基原とする生薬、カイカクはマメ科のエンジュの成熟果実を基原とする生薬で、いずれも主に止血効果を期待して用いられます。

止血成分

カルバゾクロムは、毛細血管を補強、強化して出血を抑える働きがあるとされ、止血効果を期待して配合されている場合があります。

漢方処方製剤

乙字湯、 芎帰膠艾湯のいずれも、構成生薬としてカンゾウを含みます。

乙字湯

体力中等度以上で大便が固く、便秘傾向のあるものの痔核(いぼ痔)、切れ痔、便秘、軽度の脱肛に適すとされますが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人では、悪心・嘔吐、激しい腹痛を伴う下痢などほ副作用が現れやすいなど、不向きとされます。

まれに重篤な副作用として、肝機能障害間質性肺炎を生じることが知られています。

短期間の使用に限られるものでないが、切れ痔、便秘に用いる場合には、5〜6日間服用して症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談するなどの対応が必要です。

芎帰膠艾湯

体力中等度以下冷え症で、出血傾向があり胃腸障害のないものの痔出血貧血、月経異常、月経過多、不正出血、皮下出血に適すとされるが、胃腸が弱く下痢しやすい人では、胃部不快感、 腹痛、下痢などの副作用が現れやすいなど、不向きとされます。

短期間の使用に限られるものでないが、1週間位服用して症状の改善がみられないときは、 いったん使用を中止して専門家への相談が必要です。

相互作用

外用痔疾薬のうち坐剤及び注入軟膏については、成分の一部が直腸で吸収されて循環血流中に入り、内服の場合と同様の影響を生じることがあります。

そのため、痔疾用薬の成分と同種の作用を有する成分を含む内服薬や医薬部外品、食品などが併用されると、効き目が強すぎたり、副作用が現れやすくなることがあります。

内用痔疾用薬では生薬成分を主体とした製剤や漢方処方製剤が中心となります。

受診勧奨

一般の生活者においては、痔はその発症部位から恥ずかしい病気として認識されている場合が多く、不確かな情報に基づく誤った対処がなされたり、放置して症状を悪化させてしまうことがあります。

肛門部にはもともと多くの細菌が存在していますが、肛門の括約筋よって外部からの細菌の侵入を防いでおり、血流量も豊富なため、それらの細菌によって感染症を生じることはあまりありません。

しかし、痔の悪化などにより細菌感染が起きると、異なる種類の細菌の混合感染が起こり、 膿瘍や痔瘻を生じて周囲の組織に重大なダメージをもたらすことがあります。

これらの治療には手術を要することもあり、すみやかに医療機関を受診し、専門医の診療を受ける必要があります。

痔の原因となる生活習慣の改善を図るとともに、一定期間、痔疾用薬を使用してもなお、排便時の出血、痛み、肛門周囲の痒みなどの症状が続く場合には、肛門癌などの重大な病気の可能性も考えられ、早期に医療機関が必要です。

まとめ

いかがでしょうか。

今回は登録販売者 第3章 「痔の薬」を解説しました。

痔の薬は解説にあるように、「相談するのが恥ずかしい」というお客様が多い商品です。

その分、登録販売者としては、相談されたら適切な商品選びのサポートが出来るようにしておきたいですね♪


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