駆虫薬とは
駆虫薬は、腸管内の寄生虫を駆除するために使用される医薬品です。
一般用医薬品の駆虫薬が対象とする寄生虫は、回虫と蟯虫の2つです。
いずれも手や指、飲食物などに付着した虫卵が口から入ることで感染します。
回虫の場合は、孵化した幼虫が腸管壁から体に入り込んで体内を巡り、肺に達した後、気道から再び消化管内に入って成虫となります。
そのため腹痛や下痢、栄養障害などの消化器系症状や呼吸器などにも障害を引き起こすことがあります。
蟯虫は、肛門から這い出して、その周囲に産卵するため、肛門付近のかゆみや、それに伴う不眠、神経症を引き起こすことがあります。
駆虫薬は腸管内に生息する虫体に対しては効果を発揮しますが、虫卵や腸管内以外に潜伏している幼虫(回虫の場合)には効果が及ばないため、完全に駆除するためには、それらが成虫となった頃にあらためて使用する必要があります。
再度、駆虫を必要とする場合には、1ヶ月以上間隔を置いてから使用することとされています。
なお、回虫や蟯虫の感染は、その感染経路から、通常、衣食を共にする家族全員にその可能性があります。
そのため、保健所などで虫卵検査を受けて感染が確認された場合には、基本的に家族全員が駆虫します。
駆虫薬は、一度に多く服用しても駆虫効果が高まることはなく、かえって副作用が現れやすくなるため、定められた1日の服用回数や服用期間を必ず守って、適正に使用されることが重要です。
また、複数の駆虫薬を併用した場合も同様です。
むしろ、併用した駆虫薬の組合せによっては、かえって駆虫作用が減弱することもあります。
また、駆虫薬は、その有効成分が腸管内で薬効をもたらす局所作用を目的とする医薬品であり、消化管から駆虫成分を吸収した場合は、副作用(頭痛やめまい等)が起こる原因となるため、使用量は出来るだけ少ない方が望ましいでしょう。
食事を摂って消化管内に内容物がある時に使用すると、胃や腸の中にある飲食物の消化や吸収に伴って、駆虫成分の吸収が高まるので、空腹時に使用することとされているものがほとんどです。
駆除した虫体や腸管内に残留する駆虫成分の排出を促すために瀉下薬(下剤)が併用されることがありますが、その際、ヒマシ湯を使用すると腸管内で駆虫成分が吸収されやすくなり、副作用を生じる危険性が高まるため、ヒマシ油との併用は避ける必要があります。
代表的な駆虫成分と主な副作用
サントニン

サントニンは回虫の自発運動を抑える作用を示し、虫体を排便と共に体内から排出させることを目的として使用されます。
消化管(小腸)から吸収されたサントニンは主に肝臓で代謝されますが、肝臓病の診断を受けた人では、肝機能障害を悪化させるおそれがあるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。
副作用としては、服用後、一時的に物が黄色く見えたり、耳鳴りや口渇現れることがあります。
カイニン酸

カイニン酸は回虫に痙攣を起こさせる作用を示し、虫体を排便とともに体外へ排出させることを目的として用 いられます。
カイニン酸を含む生薬成分として、マクリ(フジマツモ科のマクリの全藻を基原とする生薬)が配合されている場合もあります。

日本薬局方収載のマクリは、煎薬として回虫の駆除に用いられる。
ピペラジンリン酸塩
ピペラジンリン酸塩はアセチルコリンの伝達を妨げて、回虫と蟯虫の運動筋を麻痺させて、虫体を排便とともに排出させる働きがあります。
副作用として痙攣、倦怠感、眠気、食欲不振、下痢、便秘などが現れることがあります。
痙攣の症状のある人、貧血、著しい栄養障害の診断を受けた人では、それらの症状の悪化を招くおそれがあります。
また、肝臓病、腎臓病の診断を受けた人は、吸収されて循環血液中に移行したピペラジンが滞留して副作用を生じやすくなるおそれがあるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。
パモ酸ピルビニウム

パモ酸ピルビニウムは蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示します。
赤〜赤褐色の成分で、尿や糞便が赤く着色することがあります。
水に溶けにくいため、消化管からの吸収は少ないとされているが、ヒマシ油との併用は避ける必要があります。
また、空腹時に服用することとなっていませんが、同様の理由から、脂質分の多い食事やアルコール摂取は避けるべきです。
まとめ
いかがでしょうか。
今回は、登録販売者試験第3章「駆虫薬」についてまとめました。
現在の日本では今回登場した「駆虫薬」を使用する機会は少ななり、実際に販売したり、お客様に質問される機会も少ないでしょう。
ただし、登録販売者試験にはどの地域でも一問は出題されていますので、受験生の皆さんは是非、確実に得点出来るように覚えておきましょう!

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