乗り物酔い防止薬

めまい(眩暈)は、体の平衡を感知する平衡機能に異常が生じて起こる症状で、内耳にある平行器官の障害や、中枢神経系の障害など、様々な要因により引き起こされます。
乗物酔い防止薬は、乗物酔い(動揺病)によるめまい、吐きけ、頭痛を防いだり、緩和することを目的とする医薬品です。
主な7つの配合成分とその副作用

乗り物酔い防止薬に使われる
- 抗めまい薬
- 抗ヒスタミン薬
- 抗コリン薬
- 鎮静剤
にはいずれも眠気を促す作用があります。
[注]乗物酔い防止薬には、主として吐き気を抑えることを目的とした成分も配合されますが、つわりに伴う吐きけに使用することは適当ではありません。
① 抗めまい成分

抗めまい成分のジフェニドール塩酸塩は、内耳にある前庭と脳を結ぶ前庭神経を調節する働きのほか、内耳への血流を改善する働きがあります。
海外では「吐き気止め薬」や「めまいの治療薬」として使われてきましたが、日本では、主に「抗めまい成分」として使用されています。
副作用として、抗ヒスタミン成分や抗コリン成分と同様な「頭痛、排尿困難、眠気、散瞳による異常な眩まぶしさ、口渇」のほか、不動感や不安定感が現れることがあります。
排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人では、その症状を悪化させるおそれがあり、使用する前に、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましいでしょう。
② 抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン成分は、延髄にある嘔吐中枢への刺激や内耳の前庭における自律神経反射を抑える働きがあります。

また、抗ヒスタミン成分は乗物酔いによるめまい、吐きけなどの防止・緩和に寄与すると考えられています。
ジメンヒドリナート(ジフェンヒドラミンテオクル酸塩)は主に乗物酔い防止薬に配合される抗ヒスタミン成分です。
メクリジン塩酸塩は、他の抗ヒスタミン成分と比べて作用が現れるのが遅く、持続時間が長いのが特徴です。
ブロメタジンなどのプロメタジンを含む成分については、外国において「乳児突然死症候群」や「乳児睡眠時無呼吸発作」のような致命的な呼吸抑制を生じたとの報告があるため、15歳未満の小児では使用を避ける必要があります。
このほか、乗物酔い防止薬に配合される抗ヒスタミン成分としては、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩などがあります。
③ 抗コリン成分

抗コリン作用を有する成分は、中枢に作用して自律神経系の混乱を軽減させるとともに、末梢では消化管の緊張を低下させる働きがあります。
スコポラミン臭化水素酸塩水和物は、乗物酔い防止に古くから使用されている抗コリン成分で、消化管からよく吸収され、他の抗コリン成分と比べて脳内に移行しやすいとされますが、肝臓で速やかに代謝されてしまうため、抗ヒスタミン成分などと比べて作用の持続時間は短いのが特徴です。
抗コリン薬は
- 眠気
- 散瞳による目のかすみや異常な眩しさ
を引き起こすことがあるので、乗物の運転操作をするときは、乗物酔い防止薬の使用を控える必要があります。
スコポラミンを含む成分としてロートコン(ナス科のハシリドコロ、Scopolia carniolica Jacquin 又は Scopolia parviflora Nakai の根茎及 び根を基原とする生薬)の抽出物が配合されている場合もあります。
④ 鎮静成分

乗物酔いの発現には不安や緊張などの心理的な要因の影響も大きく、それらを和らげることを目的として、ブロモバレリル尿素やアレルイソプロピルアセチル尿素のような鎮静成分が配合されている場合があります。
⑤ キサンチン系

中枢神経系を興奮させる成分(キサンチン系成分)は脳に軽い興奮を起こさせて平衡感覚の混乱によるめまいを軽減させることを目的として、カフェイン(無水カフェイン、クエン酸カフェイン等を含む)や、ジプロフィリンなどのキサンチン系と呼ばれる成分が配合されている場合があります。
また、カフェインには、乗物酔いに伴う頭痛を和らげる作用も期待されています。
なお、カフェインが配合されているからといって、抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分又は鎮静成分の作用による眠気が解消されるわけではありません。
⑥ 局所麻酔成分

胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐刺激を和らげて、乗物酔いに伴う吐き気を抑えることを目的として、アミノ安息香酸エチルのような局所麻酔成分が配合されている場合がありますが、6歳未満への使用は避ける必要があります。
⑦ その他

吐きけの防止に働くことを期待して
- ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)
- ニコチン酸アミド
- リボフラビン(ビタミンB2)
などのビタミン成分が補助的に配合されている場合があります。
相互作用

抗ヒスタミン成分、抗コリン成分、鎮静成分、カフェイン類などの配合成分が重複すると、鎮静作用や副作用が強く現れるおそれがあるので
- かぜ薬
- 解熱鎮痛薬
- 催眠鎮静薬
- 鎮咳去痰薬
- 胃腸鎮痛鎮痙薬
- アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む)
などとの併用は避ける必要があります。
受診勧奨

3歳未満では、乗物酔いが起こることはほとんどないとされています。
乗物酔い防止薬に3歳未満の乳幼児向けの製品はなく、そうした乳幼児が乗物で移動中に機嫌が悪くなるような場合には、気圧の変化による耳の痛みなどの他の要因が考えられますので、安易に乗物酔い防止薬を使用することのないよう注意する必要があります。

乗物酔いに伴う一時的な症状としてでなく、日常において、めまいが度々生じる場合には、基本的に医療機関を受診するなどの対応が必要です。
その場合、動悸や立ちくらみ、低血圧などによるふらつきは、平衡機能の障害によるめまいとは区別される必要があります。
高齢者は、平衡機能の衰えによってめまいを起こしやすく、聴覚障害(難聴、耳鳴りなど)に伴って現れることも多いでしょう。
製品例



まとめ
いかがでしょうか。
今回は、登録販売者試験第3章「乗り物酔い防止薬」について解説しました。
登録販売者としては、乗り物酔い防止薬は効き目も大切ですが、副作用を説明することが重要だと言えます。
ですので、是非、実務でも使える様に覚えておきましょう!
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