【分かりやすさNo.1】眠気を促す薬 登録販売者試験(改訂版)解説!

登録販売者試験解説
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【分かりやすさNo.1】眠気に関する薬 登録販売者試験(改訂版)解説

眠気を促す薬

はっきりした原因がなくても、日常生活における人間関係のストレスや生活環境の変化などの様々な要因によって、自律神経系のバランスが崩れ、「寝つきが悪い、眠りが浅い、いらいら感、緊張感、精神興奮、精神不安」といった精神神経症状を生じることがあります。

また、それらの症状のために十分な休息が取れず、疲労倦怠感、寝不足感、頭重などの身体症状を伴う場合があります。

催眠鎮静薬とは、その様な症状の際、睡眠を促したり、精神の昂り(たかぶり)を鎮めたりするために使用される医薬品です。

代表的な配合成分と主な副作用

【1】抗ヒスタミン成分

抗ヒスタミン成分の8つのポイント

【1】ヒトは、脳内における情報伝達物質で、覚醒維持調節を行っているヒスタミンの刺激が低下すると眠気を促します。

そんなヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン成分の中でも特にそのような働き強いのが、ジフェンヒドラミン塩酸塩です。

【2】抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬は、睡眠改善薬として一時的な睡眠障害(寝つきが悪い、眠りが浅い)などの緩和に使用されるもので、慢性的に不眠症状がある人や、 医療機関において不眠症の診断を受けている人を対象とするものではありません。

睡眠改善薬例「ドリエル」

エスエス製薬「ドリエル」情報サイト

【3】妊娠中にしばしば起こる睡眠障害は、ホルモンのバランスや体型の変化などが原因で、睡眠改善薬の適用対象ではありませんので、妊婦又は妊娠していると思われる女性は、睡眠改善薬の使用は避けるべきです。

【4】小児及び若年者では、抗ヒスタミン成分により、眠気とは逆に神経過敏中枢興奮などが現れることがあります。

特に15歳未満の小児では、そうした副作用が起きやすいため、抗ヒスタミン成分を配合した睡眠改善薬の使用は避けましょう。

【5】他の医薬品の場合も、抗ヒスタミン成分を配合する医薬品(抗アレルギー薬やかぜ薬など)は、眠気の副作用に注意が必要です。

【6】抗ヒスタミン成分を配合している医薬品の服用後は、「自動車の運転」など危険を伴う機会の操作に従事させてはいけません。

【7】睡眠改善薬の場合、目が覚めた後も

  • 注意力の低下
  • 寝ぼけのような症状
  • 判断力の低下などの一時的な意識障害
  • めまい
  • 倦怠感

などを起こすことがあるので注意が必要です。

【8】翌日まで眠気やだるさを感じる時は、それらの症状がなくなる迄は自動車の運転など、危険を伴う機械の操作は避けることとされています。

【2】ブロモバレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素

5つのポイント

【1】いずれも脳の興奮を抑え、痛覚(痛み)を鈍くする働きがあります。

【2】少量でも眠気を催しやすく、それにより重大な事故を招くおそれがあるため、これらの成分が配合された医薬品を使用した後は、乗物や危険を伴う機械などの運転操作は避ける必要があります。

【3】繰り返し使用すると依存を生じることが知られていて、これらの成分が配合された医薬品が薬物乱用がなされることがあることに留意が必要です。

【4】不眠や不安の症状はうつ病に起因して生じる場合があり、うつ病患者は時に自殺行動を起こすことがあります。

かつては不眠症や不安緊張状態の鎮静を目的にブロモバレリル尿素が 頻繁に用いられていましたが、「ブロモバレリル尿素の大量摂取による自殺」が日本で社会問題になったことや、ベンゾジアゼピン系成分にその役割が取って代わられたことから近年は使用量が減少しています。

【5】ブロモバレリル尿素は胎児に障害を引き起こす可能性があるため、妊婦又は妊娠していると思われる女性は使用を避けるべきです。

【3】生薬成分

神経の興奮や緊張緩和を期待して

  • チョウトウコウ
  • サンソウニン
  • カノコソウ
  • チャボトケイソウ
  • ホップ

などの生薬成分が複数配合されている製品があります。

生薬成分のみからなる鎮静薬であっても、複数の鎮静薬の併用や、長期連用は避けるべきです。

① チョウトウコウ

アカネ科のカギカズラ(Uncaria sinensis Haviland 又は Uncaria macrophylla Wallich)の通例とげを基原とする生薬です。

② サンソウニン

クロウメモドキ科のサネブトナツメの種子を基原とする生薬です。

③ カノコソウ(別名キッソウコン)

オミナエシ科のカノコソウの根茎及び根茎を基原とする生薬です。

④ チャボトケイソウ(別名パッシフローラ)

南米原産のトケイソウ科の植物で、その開花期における茎及び葉が薬用部位となります。

⑤ ホップ

ヨーロッパ南部から西アジアを原産とするアサ科のホップの成熟した球果状の果穂が薬用部位となります。

漢方処方製剤

神経質、精神不安、不眠などの症状の改善を目的とした漢方処方製剤には

  • 酸棗仁湯
  • 加味帰脾湯
  • 抑肝散
  • 抑肝散加陳皮半夏
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯
  • 桂枝加竜骨牡蛎湯

などがあります。

これらの漢方処方製剤は症状の原因となる体質改善を目的としているため、いずれの処方も比較的長期間(1ヶ月くらい)服用されることがほとんどです。

また、これらの漢方処方製剤のほとんどが、構成生薬としてカンゾウを含みます。

  • 抑肝散
  • 抑肝散加陳皮半夏
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯
  • 桂枝加竜骨牡蛎湯

については、小児のかん夜泣きにも使用されます。

酸棗仁湯

体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの不眠症神経症に適すとされますが、胃腸が弱い人、下痢又は下痢傾向のある人では、消化器系の副作用(悪心、食欲不振、胃部不快感など)が現れやすいなど不向きとされています。

1週間くらい服用して症状の改善がみられない場合には、漫然と服用を継続せず、医療機関を受診するなどの対応が必要です。

加味帰脾湯

体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの貧血不眠症、精神不安、神経症に適すとされています。

抑肝散

抑肝散は体力中等度を目安として、神経がたかぶり、怒りやすいイライラなどがあるものの、神経症不眠症小児夜泣き小児の疳(神経過敏)歯ぎしり、更年期障害、血の道症に適すとされます。

心不全を引き起こす可能性があるため、動くと息が苦しい、疲れやすい、足がむくむ、急に体重が増えた場合は直ちに医師の診療を受けるべきです。

抑肝散加陳皮半夏

体力中等度を目安として、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすいイライラなどがあるものの神経症、不眠症小児夜泣き小児の疳、(神経過敏)更年期障害、血の道症、歯ぎしりに適すとされます。

柴胡加竜骨牡蛎湯

体力中等度以上で、精神不安があって、動悸不眠、便秘などを伴う高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘に適すとされますが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人、瀉下薬(下剤)を服用している人では、腹痛、激しい腹痛を伴う下痢の副作用が現れやすいなど、不向きとされています。

重篤な副作用として、まれに肝機能障害、間質性肺炎を生じることが知られています。

桂枝加竜骨牡蛎湯

体力中等度以下で神経過敏で疲れやすく、興奮しやすいものの神経質、不眠症小児夜泣き夜尿症、眼精疲労、神経症に適すとされています。

4つの相互作用

【1】ジフェンヒドラミン塩酸塩、ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素は、催眠鎮静薬以外の一般用医薬品や医療用医薬品にも配合されていることがよくあります。

これらの成分を配合する医薬品と他の催眠鎮静薬が併用されると、効き目や副作用が増強されるお
それがあります。

【2】医療機関で不眠症(睡眠障害)、不安症、神経症などと診断されて、治療(薬物治療以外の治療を含む)を受けている患者が、一般用医薬品の催眠鎮静薬を自己判断で使用すると、医師による治療を妨げるおそれがあるため、使用を避ける必要があります。

【3】寝つきが悪いときの処置としてアルコールが摂取される(俗に言う寝酒)ことがありますが、飲酒とともにジフェンヒドラミン塩酸塩、ブロモバレリル尿素又はアリルイソプロピルアセチル尿素を含む催眠鎮静薬を服用すると、その薬効や副作用が増強されるおそれがあるため、服用時には飲酒を避ける必要があります。

なお、生薬成分のみからなる鎮静薬や漢方処方製剤の場合は、飲酒を避けることとはなっていませんが、アルコールが睡眠の質を低下させ、医薬品の効果を妨げることがあります。

【4】カノコソウ、サンソウニン、チャボトケイソウ、ホップなどを含む医薬品は、医薬品的な効能効果が標榜又は暗示されていなければ、食品(ハーブなど)として流通可能ですが、それらの成分又は他の鎮静作用があるハーブ(セントジョーンズワートなど)を含む食品を併せて摂取すると、医薬品の薬効が増強減弱したり、副作用のリスクが高まったりすることがあります。

受診勧奨

基本的に、不眠に対して一般用医薬品で対処することが可能なのは、特段の基礎疾患がない人における、ストレス、疲労、時差ぼけなどの睡眠リズムの乱れが原因の一時的な不眠や寝つきが悪い場合です。

例えば

  • 寝ようとして床に入ってもなかなか寝つけない(入眠障害
  • 睡眠時間を十分取ったつもりでもぐっすり眠った感じがしない(熟眠障害
  • 睡眠時間中に何度も目が覚めてしまい再び寝つくのが難しい(中途覚醒
  • まだ眠りたいのに早く目が覚めてしまって寝つけない(早朝覚醒

などの症状が慢性的に続いている場合は、鬱病などの精神神経疾患や、何らかの身体疾患に起因する不眠、又は催眠鎮静薬の使いすぎによる不眠などの可能性も考えられるため、医療機関を受診させるなどの対応が必要です。

なお、ブロモバレリル尿素などの鎮静成分を大量摂取したときの応急処置は、高度な専門的判断を必要とするため、「専門家に相談する」、昏睡や呼吸抑制が起きているようであれば、「直ちに救命救急が可能な医療機関に連れて行く」などの対応を取ることができるように十分な説明がなされるべきです。

また、ブロモバレリル尿素などを繰り返し摂取することによって薬物依存の状態になっている場合は、自己の努力のみで依存からの離脱を図ることは困難であり、医療機関での診療が必要です。

眠気を防ぐ薬

睡眠は健康維持に欠かせないものです。

しかし、ある程度の睡眠を取っていても、食事の後や単調な作業が続く時など、脳の緊張が低下して眠気や倦怠感(だるさ)を生じることがあります。

眠気防止薬は、眠気や倦怠感を除去することを目的とした医薬品で、主な有効成分としてカフェイン(無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェインなど)が配合されています。

カフェインの働きと主な副作用

カフェインは、脳に軽い興奮状態を引き起こし、一時的に眠気や倦怠感を抑える効果があります。

脳が過剰に興奮すると、副作用として振戦(震え)、めまい、不安、不眠、頭痛等を生じることがあります。

カフェインの眠気防止に関連しない6つの作用

① 腎臓におけるナトリウムイオン(同時に水分)の再吸収抑制作用があるため、尿量の増加(利尿)をもたらします。

胃液分泌亢進作用があり、副作用として胃腸障害(食欲不振、悪心・嘔吐)が現れることがあるため、胃酸過多の人や胃潰瘍のある人は、服用を避けます。

③ 心筋を興奮させる作用があり、副作用として動悸が現れることがあるので、心臓病のある人は服用を避けます。

④ カフェインには繰り返し摂取することで、依存を形成するという性質があるため、「短期間の服用にとどめ、連用しないこと」という注意喚起がなされています。

妊娠中の眠気防止薬の使用が胎児に影響を及ぼすか否かは明らかにされていませんが、吸収されて循環血液中に移行したカフェインの一部は「血液-胎盤関門」を通過して胎児に到達することが知られていて、胎児の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 摂取されたカフェインの一部は乳汁中に移行しますが、乳児は肝臓が未発達なため、カフェインの代謝にはより多くの時間を要しますので、授乳中の女性がカフェインを大量に摂取したり、カフェインを連用したりした場合には、乳児の体内にカフェインが蓄積して、頻脈不眠などを引き起こす可能性があります。

そのため、 授乳期間中はカフェインの総摂取量が継続して多くならないよう留意する必要があります。

眠気による倦怠感を和らげわる成分

なお、眠気を抑える成分ではありませんが、眠気による倦怠感を和らげる補助成分として

  • ビタミンB1(チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩など)
  • ビタミンB2(リボフラビンリン酸エステルナトリウムなど)
  • パントテン酸カルシウムなど
  • ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩など)
  • ビタミンB12(シアノコバラミンなど)
  • ニコチン酸アミド
  • アミノエチルスルホン酸(タウリン)

などが配合されている場合があります。

相互作用

カフェインは、他の医薬品(かぜ薬、解熱鎮痛薬、乗物酔い防止薬、滋養強壮保健薬など)や医薬部外品(ビタミン含有保健剤など)、食品(お茶、コーヒーなど)にも含まれているため、それらが眠気防止薬と同時に摂取されたり、併用されると、カフェインの過剰摂取となり、中枢神経系や循環器系などへの作用が強く現れる恐れがあります。

当然ですが、「かぜ薬」や「アレルギー用薬」などを使用したことによる眠気を抑えるために眠気防止薬を使用するのは適切ではありません。

また、眠気防止薬におけるカフェインの1回摂取量はカフェインとして200mg、1日摂取量はカフェインとして500mg が上限とされています。

休養の勧奨

眠気防止薬は、一時的に精神的な集中を必要とするときに、眠気や倦怠感を除去する目的で使用されるもので、疲労を解消したり、睡眠が不要になるというものではありません。

睡眠不足による疲労には、早めに十分な睡眠をとることが望ましいと言えます。

特に内服する液剤の場合、本来の目的以外の意図に基づく不適正な使用(乱用)がなされることがあります。

内服される液剤

また、かぜやインフルエンザウイルスなどに感染した時に生じる眠気は、ヒトが本来持っている防御反応で(睡眠をとることで免疫機能が高まる)、そのような時に眠気防止薬で睡眠を妨げると、病気の治癒を遅らせるおそれがあります。

ただ、十分な睡眠をとっていても、眠気防止薬の使用では抑えられない眠気や倦怠感(だるさ)が続くような場合には、「神経、心臓、肺、肝臓」などの重大な病気が原因となっている可能性もあります。

さらには、睡眠時無呼吸症候群、重度の不安症や鬱病、ナルコレプシーなどの症状としての眠気も考えられるため、医療機関を受診するなどの対応が必要です。

成長ホルモンは睡眠物質と同時に分泌され、それにより睡眠が促されることが知られています。

すなわち、定期的な睡眠によって、生体は正常な状態に維持され、成長することが出来るのです。

したがって、特に成長期の小児の発育には睡眠が重要なので、小児用の眠気防止薬はありません。

眠気防止薬が「小・中学生の試験勉強に効果がある」と誤解されて誤用事故を起こした例も知られていて、15歳未満の小児に使用されることがないよう注意が必要です。

まとめ

いかがでしょうか。

今回は登録販売者試験・第3章「眠気に関する薬」についてまとめました。

医療機関において不眠症の治療のため処方される睡眠薬(医療用医薬品)と区別するため、一般用医薬品では、睡眠改善薬又は睡眠補助薬と呼ばれています。

登録販売者としては、睡眠薬との違いを十分に理解した上で販売、もしくは受診勧奨する必要があります。

登録販売者試験受験生の方は、是非、実務にも必要な知識ですのでしっかりと覚えてくださいね♪


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