【改訂版】「かぜ薬」登録販売者試験問題解説
かぜ薬の諸症状と働き

かぜ(感冒)の症状は、くしゃみ、鼻汁・鼻閉(鼻づまり)咽喉痛、頭痛、咳、痰などの呼吸器症状と、発熱、頭痛、関節痛、全身倦怠感など、様々な全身症状が組み合わさって現れます。
かぜは単一の疾患ではなく、医学的にはかぜ症候群といい、主にウイルスが鼻や喉などに粘膜に感染して起こる急性上気道炎の総称です。
通常は数日〜1週間程度で自然に治ります。
かぜの約8割はウィルス(ライノウイルス,コロナウイルス,アデノウイルスなど)の感染が原因ですが、それ以外に細菌の感染や、まれに冷気や乾燥、アレルギーのような非感染性が原因の場合もあります。

原因となるウイルスは、200種類を超えるといわれていて、それぞれに適した環境があるので季節や時期によって流行するウイルスや細菌の種類は異なります。
かぜとよく似た症状が現れる疾患に、喘息やアレルギー性鼻炎、リウマチ熱、関節リウマチ、肺炎、肺結核、髄膜炎、急性肝炎、尿路感染症など多数あります。
急激な発熱を伴う場合や、症状が4日以上続くとき、又は症状が重篤なときは、かぜではない可能性が高いといえます。
発熱や頭痛を伴って悪心・嘔吐や、下痢などの消化器症状が現れることもあり、俗にお腹にくる風邪などと呼ばれますが、冬場にこれらの症状が現れた場合はかぜではなく、ウイルスが消化器に感染したことによるウイルス性胃腸炎の場合が多いと言われています。

インフルエンザ(流行性感冒)は、かぜと同様、ウイルスの呼吸器感染によるものですが、感染力が強く、重症化しやすいため、かぜとは区別して扱われます。
かぜ薬は、かぜの諸症状の緩和を目的としている医薬品で総合感冒薬と呼ばれています。
かぜは、本来、ヒトに備わっているよ免疫によってウイルスが消滅すれば自然に治癒します。
したがって、安静にして栄養と休養、水分を十分に摂ることが基本です。

かぜ薬は、ウイルスの増殖を抑えたり、ウイルスを体内から除去するものではなく、咳や発熱による体力を消耗などの諸症状の緩和を目的とした対処療法薬です。
また、かぜだからといって、必ずしもかぜ薬(総合感冒薬)を使用するのが最適とは限りません。
発熱、咳、鼻水などの症状がはっきりしている場合には、解熱鎮痛薬や鎮咳去痰薬、鼻炎薬などを使用することが望ましいと言えます。
それは総合感冒薬は熱や鼻、咳、痰、喉の痛みなどに対する成分を配合しているからです。
例えば、本来なら鼻水を抑える成分だけが必要な人が、解熱剤や咳止めなどの不要な成分も服用することで無意味に副作用のリスクを高めることになるからです。
主な配合成分
解熱鎮痛成分

かぜ薬に配合される主な解熱鎮痛成分としては
などがあります。
- アスピリン
- サリチルアミド
- エテンザミド
- アセトアミノフェン
- イブプロフェン
- イソプロピルアンチピリン
解熱作用がある生薬としてジリュウ(地竜)やゴオウ(牛黄)が配合されている場合もあります。
なお、サリチルアミド、エテンザミドについては、15歳未満の小児で水痘(水疱瘡)又はインフルエンザにかかっている時は使用を避ける必要があります。
ただ、一般の生活者にとって、かぜとインフルエンザは区別がつきにくいでしょう。
登録販売者は、インフルエンザが流行している時期に医薬品を販売する際には、積極的に注意を促したり、解熱鎮痛成分がアセトアミノフェンや生薬のみを使用している製品をお勧めすることが重要です。

第一三共ヘルスケア「これって風邪(かぜ)?インフルエンザとはどう違う?」
健栄製薬「インフルエンザのとき使われるアセトアミノフェン配合の解熱剤の特徴は?」
くしゃみや鼻汁を抑える成分(抗ヒスタミン成分、抗コリン成分)

かぜ薬に配合される主な抗ヒスタミン成分には
- クロルフェニラミンマレイン酸塩
- カルビノキサミンマレイン酸塩
- メキタジン
- クレマスチンフマル酸塩
- ジフェンヒドラミン塩酸塩
などがあります。
また、抗コリン作用によって鼻水やくしゃみを抑えることを目的として
- ベラドンナ総アルカロイド
- ヨウ化イソプロパミド
が配合されている場合もあります。
鼻粘膜の充血を和らげ、気管・気管支を拡げる成分(アドレナリン作動成分)

かぜ薬に配合される主なアドレナリン作動成分には
- メチルエフェドリン塩酸塩
- メチルエフェドリンサッカリン塩
- プソイドエフェドリン塩酸塩
などがあります。
これらと同様の作用を示す生薬としてマオウ(マオウ)が配合されている場合もあります。
いずれの成分も依存性があることに注意が必要です。
咳を抑える成分(鎮咳成分)

かぜ薬に配合される主な鎮咳成分には
- コデインリン酸塩水和物
- ジヒドロコデインリン酸塩、
- デキストロメトルファン臭化水素酸塩
- ノスカピン
- チペピジンヒベンズ酸塩
- クロペラスチン塩酸塩
などがあります。
鎮咳作用を目的として、ナンテンジツなどの生薬成分が配合されている場合もあります。
なお、これらのうちコデインリン酸塩水和物及びジヒドロコデインリン酸塩は、依存性がある成分なので注意が必要です。
また、これらの咳止め成分は12歳未満の小児
には使用禁忌となっています
痰の切れを良くする成分(去痰成分)

かぜ薬に配合される主な去痰成分には
- グアイフェネシン
- グアヤコールスルホン酸カリウム
- ブロムヘキシン塩酸塩
- エチルシステイン塩酸塩
などがあります。
去痰作用を目的として、シャゼンソウ、セネガ、キキョウ、セキサン、オウヒなどの生薬が配合されている場合もあります。
炎症による腫れを和らげる成分(抗炎症成分)

鼻粘膜や喉の炎症による腫れを和らげることを目的として
- ブロメライン
- トラネキサム酸
- グリチルリチン酸二カリウム
などが配合されている場合があります。
ブロメラインは、いずれもタンパク質分解酵素で、体内で産生される炎症物質(起炎性ポリペプチド)を分解して炎症を抑える働きがあります。
トラネキサム酸

体内で炎症を起こす原因になっている物質の産生を抑えて炎症や腫れを和らげます。
ただし、凝固した血液を溶けにくくする働きもあるので、血栓のある人(脳血栓、心筋梗塞、血栓性静脈炎など)や、血栓を起こすおそれのある人に使用する場合は、治療を行っ ている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談する必要があります。
☝️トラネキサム酸は、人工的に作り出されたアミノ酸の一種です。「プラスミン」と呼ばれる、血液を溶かしたり、炎症を引き起こしたりする物質の作用を抑える働きがあります。
グリチルリチン酸二カリウム

グリチルリチン酸二カリウムの作用本体のグリチルリチン酸は、ステロイド性抗炎症成分に似ていることので、抗炎症作用を示すと考えられています。
グリチルリチン酸を大量に摂取すると、偽アルドステロン症を生じるおそれがあります。
むくみ、心臓病、腎臓病、高血圧のある人や高齢者では偽アルドステロン症を生じるリスクが高いので、それらの人に1日最大服用量がグリチルリチン酸として40mg以上 の製品を使用する場合は、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談するなど、事前にその適否を十分考慮するとともに、偽アルドステロン症の初期症状に常に留意するなど、慎重に使用する必要があります。
また、どのような人が対象であっても、 1日最大服用量がグリチルリチン酸として40mg 以上となる製品は長期連用を避けることと定められています。
なお、医薬品ではグリチルリチン酸としての1日摂取量が200mgを超えないように用量が定められていますが、かぜ薬以外の医薬品にも配合されていること が少なくなく、グリチルリチン酸ニカリウムは甘味料として一般食品や医薬部外品などにも広く使用されているので、登録販売者は購入者などに対して、グリチルリチン酸の総摂取量が過剰にならないよう注意を促す必要があります。
グリチルリチン酸を含む生薬成分としてカンゾウが配合されている場合もある。
その他
発汗、抗炎症などの作用を目的として、カミツレなどの生薬成分が配合されている場合があります。
※)カミツレの成分であるアズレンを水溶性にしたアズレンスルホン酸ナトリウムが用いられる場合もあります。
漢方処方成分

かぜ薬に配合される漢方処方成分、又は単独でかぜの症状の緩和に用いられる漢方処方製剤の主なものに
- 葛根湯
- 麻黄湯
- 小柴胡湯
- 柴胡桂枝湯
- 小青竜湯
- 桂枝湯
- 香蘇散
- 半夏厚朴湯
- 麦門冬湯
があります。
これらのうち半夏厚朴湯を除くいずれも、構成生薬としてカンゾウを含みます。
また、これらのうち、麻黄湯、葛根湯、小青竜湯は、構成生薬としてマオウを含みます。
葛根湯

体力中等度以上のものの、感冒の初期(汗をかいていない)鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛みに適します。
体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人では、悪心、胃部不快感等の副作用が現れやすいなど、不向きとされています。
まれに重篤な副作用として「肝機能障害、偽アルドステロン症」を生じることが知られています。
麻黄湯

体力充実して、かぜのひきはじめで、寒気がして発熱、頭痛があり、咳が出て身体のふしぶしが痛く、汗が出ていないものの感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまりに適すとされます。
胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人では、悪心、胃部不快感、発汗過多、全身脱力感などの 副作用が現れやすい等、不向きとされています。
漢方処方製剤としての麻黄湯では、マオウの含有量が多くなるため、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)は使用を避ける必要があります。
小柴胡湯

小柴胡湯は、体力中等度で、ときに脇腹(腹)からみぞおちあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦味があり、舌に白苔がつくものの食欲不振、吐きけ、胃炎、胃痛、胃腸虚弱、疲労感、か ぜの後期の諸症状に適すとされています。
また、胃腸虚弱、胃炎のような消化器症状にも用いられます。
カミツレの成分であるアズレンスルホン酸ナトリウム(アズレン)が用いられる場合もありますが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)には不向きとされています。
柴胡桂枝湯

体力中等度又はやや虚弱で、多くは腹痛を伴い、ときに微熱・寒気・頭痛・吐き気などのあるものの胃腸炎、かぜの中期から後期の症状に適すとされています。
小柴胡湯と柴胡桂枝湯どちらも、まれに重篤な副作用として間質性肺炎、肝機能障害を生じることが知られていて、その他の副作用として、膀胱炎様症状(頻尿、排尿痛、血尿、残尿感)が現れることもあります。
小柴胡湯はインターフェロン製剤で治療を受けている人は間質性肺炎の副作用が現れるおそれが高まるので、使用を避ける必要があります。
また、肝臓病自体が間質性肺炎を起こす要因のひとつとされていて、肝臓病の診断を受けた人では、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談する必要があります。
小青竜湯

体力中等度又はやや虚弱で、薄い水様の痰を伴う咳や鼻水が出るものの気管支炎、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症に適すとされていますが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人では、悪心、胃部不快感などの副作用が現れやすいなど、不向きとされています。
まれに重篤な副作用として、肝機能障害者、間質性肺炎、偽アルドステロン症を生じることが知られています。
桂枝湯

体力虚弱で、汗が出るもののかぜの初期に適すとされています。
香蘇散

体力虚弱で、神経過敏で気分がすぐれず、胃腸の弱いもののかぜの初期、血の道症に適すとされています。
鎮静成分
解熱鎮痛成分の鎮痛作用を補う目的で
- ブロモバレリル尿素
- アリルイソプロピルアセチル尿素
などの鎮静成分が配合されている場合があります。
これらの鎮静成分には、いずれも依存性があることに留意する必要があります。
胃酸を中和する成分(制酸成分)
解熱鎮痛成分による胃腸障害を減らす目的として
- ケイ酸アルミニウム
- 酸化マグネシウム
- 水酸化アルミニウムゲル
などの制酸成分が配合されていることがあります。
なお、この場合、胃腸薬のように、胃腸症状に対する薬効を標記することは認められていません。
カフェイン類
解熱鎮痛成分の鎮痛作用を補う目的で
- カフェイン
- 無水カフェイン
- 安息香酸ナトリウムカフェイン
などが配合されている場合があります。
なお、カフェイン類が配合されているからといって、必ずしも抗ヒスタミン成分や鎮静成分の作用による眠気が解消されるわけではありません。
その他・ビタミン成分など
かぜの時に消耗しやすいビタミンなどを補うために
- ビタミンC(アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウムなど)
- ビタミンB2(リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム)
- ヘスペリジン
- ビタミンB1(チアミン硝化物、フルスルチアミン塩酸塩、ビスイブチアミン、 チアミンジスルフィド、ベンフォチアミン、ビスベンチアミンなど)
- アミノエチルスルホン酸 (タウリン)
などが配合されている場合があります。
また、強壮作用などを期待してニンジンやチクセウニンジンなどの生薬が配合されている場合もあります。
主な副作用・相互作用・受診勧奨
主な副作用
かぜ薬の重篤な副作用は、配合されている解熱鎮痛成分よるものが多いとされています。
まれに、ショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性皮膚壊死融解症、喘息、間質性肺炎が起きることがありますが、これらはかぜ薬の「使用上の注意」では、配合成分に関わらず共通して記載されています。
このほか配合成分によっては、まれに重篤な副作用として、肝機能障害、偽アルドステロン症、腎障害、無菌性髄膜炎を生じることがあります。
また、その他の副作用として、皮膚症状(発疹・発赤、掻痒感)消化器症状(悪心・嘔吐、 食欲不振)めまいなどよほか、配合成分によっては、眠気や口渇、便秘、排尿困難などが現れることがあります。
相互作用
かぜ薬には、通常、複数の有効成分が配合されているため、他の
- かぜ薬
- 解熱鎮痛薬
- 鎮咳去痰薬
- 鼻炎用薬
- アレルギー用薬
- 鎮静薬
- 睡眠改善薬
などが併用されると、同じ成分や同じ種類の働きがある成分が重複して、効き目が強くなりすぎたり、副作用が起こりやすくなるおそれがあります。
また、かぜに対する民間療法として、玉子酒など、しばしば酒類(アルコール)が用いられますが、アルコールは医薬品の成分の吸収や代謝に影響を与えるため、肝機能障害などの副作用が起こりやすくなります。
したがって、かぜ薬の服用期間中は飲酒を控える必要があります。
受診勧奨

かぜ薬の使用は、発熱や頭痛・関節痛、くしゃみ、鼻汁・鼻閉(鼻づまり)、咽喉痛、咳、痰などの症状を緩和する対処療法です。
一定期間又は一定回数使用して症状の改善がみられない場合は、かぜとよく似た症状を現す別の疾患や細菌感染の合併などが疑われるため、一般用医薬品で対処することは適当でない可能性があります。
このような場合、登録販売者は購入者などに対して、漫然とかぜ薬の使用を継続せずに、医療機関
を受診するよう促すべきです。
特に、かぜ薬の使用後に症状が悪化した場合には、間質性肺炎やアスピリン喘息など「かぜ薬自体」の副作用が現れた可能性もあります。
なお、高熱、黄色や緑色に濁った膿性の鼻汁・痰、喉(扁桃)の激しい痛みや腫れ、呼吸困難を伴う激しい咳といった症状がみられる場合は、一般用医薬品ではなく、初めから医療機関での診療を受けることが望ましい。
また、慢性の呼吸器疾患、心臓病、糖尿病などの基礎疾患がある人の場合も、基礎疾患の悪化や合併症の発症を避けるため、初めから医療機関を受診することが望ましいでしょう。
小児はかぜをひいた場合、急性中耳炎を併発しやすいです。
また、症状が長引くような場合は、医療機関で診療を受けるなどの対応が必要です。
また、2歳未満の乳幼児には、医師の診断を受けさせることを優先し、止むを得ない場合にのみ服用させることとされています。
肝機能障害を生じることがある主な成分
- アスピリン
- アスピリンアルミニウム
- アセトアミノフェン
- イブプロフェン
- 葛根湯
- 小柴胡湯
- 柴胡桂枝湯
- 小青竜湯
- 麦門冬湯
偽アルドステロン症を生じることがある主な成分
- グリチルリチン酸二カリウム
- グリチルレチン酸
- カンゾウ
腎障害、無菌性髄膜炎を生じることがある主な成分
イブプロフェン
眠気や口渇が現れることがある主な成分
抗ヒスタミン成分(眠気については、鎮静成分でも現れることがある)
便秘が現れることがある主な成分
- コデインリン酸塩
- ジヒドロコデインリン酸塩
排尿困難が現れることがある主な成分
- 抗コリン成分(べラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド)
- 抗ヒスタミン成分
- マオウ
まとめ
いかがでしょうか。
今回は、「厚生労働省 登録販売者試験問題作成の手引き」より「第3章・かぜ薬」を解説しました。
第3章は覚えることが多いですが、コツコツ勉強すれば、必ず合格ラインに到達出来ます!
受験生のみなさん、最後まで頑張りましょう!

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