皮膚、骨・関節、筋肉などの運動器官
外皮系
身体を覆う皮膚と、汗腺・皮脂腺・乳腺などの皮脂腺や爪、毛などの角質を総称して外皮系といいます。
皮膚の主な4つの機能
【1】身体の維持と保護
皮膚は体表面を包んで、体の形を維持し、保護するバリア機能があります。
また、細菌などの異物が体内へ侵入するのを防いでいます。
爪や毛などの角質は皮膚の一部が変化してできたもので、皮膚に強度を与えて体を保護しています。
【2】体水分の保持
体の水分が体外に蒸発しないように、また水分が体内に浸透しないように遮断しています。
【3】熱交換
外界と体内の熱のやり取りをする機能で、体温を一定に保つため重要な役割を担 っています。
体温が上がり始めると、皮膚を通っている毛細血管に血液がより多く流れるように血管が開いて、体の外へより多くの熱を排出します。
また、汗腺から汗を分泌して、汗が蒸発する時の気化熱を利用して体温を下げています。
逆に、体温が下がり始めると血管は収縮して放熱を抑えます。
【4】外界情報の感知
触覚・圧覚・痛覚・温度感覚などの皮膚感覚を得る感覚器としての機能も有ります。
皮膚のバリア機能
皮膚の表面には常に一定の微生物が付着していて、それら微生物の存在によって「皮膚表面での病原菌の繁殖の抑制」と「病原菌の体内への侵入防止」が行われています。
皮膚の表面に存在する微生物のバランスが崩れたり、皮膚を構成する組織に損傷を生じると、病原菌の繁殖や侵入が起こりやすくなります。
体がそれらを排除しようとすると、皮膚に炎症を生じて、発疹や発赤、痒みなどの症状が現れることがあります。
皮膚の構造
皮膚は、表皮・真皮・皮下組織の3層構造からなっています。

表皮
表皮は最も外側にある角質層と生きた表皮細胞の層に分けられます。
角質層は、細胞膜が丈夫な線維性のタンパク質(ケラチン)でできた板状の角質細胞と、セラミド(リン脂質の一種)を主成分とする細胞間脂質構成されており、皮膚のバリア機能を担っています。

皮膚に物理的な刺激が繰り返されると角質層が肥厚(厚みが増す)して、たこやうおの目ができます。
ワンポイント解説
しんがあり、触れると圧迫され神経に痛みを感じるのがうおの目です。
たこは、しんはありませんが、皮膚が固くもりあがり、圧迫されると神経に触れて痛みます。
皮膚の色は、表皮や真皮に沈着したメラニン色素によるものです。
メラニン色素は、表皮の最下層にあるメラニン産生細胞(メラノサイト)で産生され、太陽光に含まれる紫外線から皮膚組織を防ぐ役割があります。

メラニン色素の防護能力を超える紫外線に曝さらされると、皮膚組織が損傷を受け、炎症を生じて発熱や水泡、痛みなどの症状が起きます。
また、メラノサイトが活性化されてメラニン色素の過剰な産生が起こると、「シミ」や「そばかす」として沈着します。
真皮
真皮は、線維芽細胞とその細胞で産生された線維性のタンパク質(コラーゲン・フィブリリン・エラスチンなど)からなる結合組織の層で、皮膚に弾力と強さを与えています。

また、真皮には、毛細血管や知覚神経の末端が通っています。
皮下組織
真皮の下には皮下組織があり、脂肪細胞が多く集まって皮下脂肪層となっています。
皮下脂肪層は、外気の熱や寒さから体を守るとともに、衝撃的から体を保護するほか、脂質としてエネルギー源を蓄える機能があります。
毛
皮膚の付属器として毛があります。
毛根の最も深い部分を毛球といいます。
毛球の下端のへこんでいる部分を毛乳頭といい、毛乳頭には毛細血管が入り込んで、取り巻く毛母細胞に栄養分を運んでいます。

毛母細胞では細胞分裂が盛んに行われ、次々に分裂してできる新しい細胞が押し上げられて、次第に角化して毛を形成しています。
毛母細胞の間にはメラノサイトが分布し、産生されたメラニン色素が毛母細胞に渡されます。
このメラニン色素の量によって毛の色が決まります。
毛根を鞘状(さや状)に包んでいる毛包には、立毛筋と皮脂腺がつながっています。

立毛筋は気温や感情の変化などの刺激によって収縮し、毛穴が隆起する立毛反射(鳥肌)生じます。(寒さだけでなく、ドラマなどの怖いシーンでゾクゾクすると鳥肌が立ちます)
皮脂腺
皮脂腺は腺細胞が集まってできていて、脂分を蓄えて死んだ腺細胞自身が分泌物(皮脂)となって毛穴から排出されます。
皮脂は皮膚を潤いのある柔軟な状態に保つとともに、外部からの異物に対する保護膜としての働きがあります。
皮脂の分泌が低下すると皮膚が乾燥し、皮膚炎や湿疹を起こすことがあります。
汗腺

汗腺には、腋窩(えきか=わきのした)などの毛根部に分布するアポクリン腺(体臭腺)と手のひらなど毛根がないところも含め、全身に分布するエクリン腺の二種類があります。
汗はエクリン腺から分泌され、体温調節のための発汗は全身の皮膚に生じますが、精神的緊張による発汗は手のひらや足底、脇の下の皮膚、顔面などの限られた皮膚に生じます。
骨格形
骨格系は骨と関節からなり、骨と骨が関節で接合し、連なって体を支えています。
骨は体の器官のうち最も硬い組織の一つで、その基本構造は
- 主部となる骨質
- 骨質表面を覆う骨膜
- 骨質内部の骨髄
- 骨の接合部にある関節軟骨
の四組織で構成されています。
骨の機能

運動機能
骨格筋の収縮を効果的に体の運動に転換しています。
造血機能

骨髄で産生される造血幹細胞から「赤血球・白血球・血小板」が分化することで体内に供給しています。
貯蔵機能

カルシウムやリンなどの無機質を蓄えています。
骨は生きた組織で、成長が停止した後も一生を通じて破壊(骨吸収)と修復(骨形成)が行われています。
骨吸収と骨形成とが互いに密接な連絡を保ちながら繰り返されています。
骨の新陳代謝

骨を構成する無機質は、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムなどの石灰質ですが、それらのカルシウムが骨から溶け出し、ほぼ同量のカルシウムが骨に沈着します。
このカルシウムなどの石灰質の吸収と形成のバランスが取られることにより、一定の骨密度が保たれています。
無機質は骨に硬さを与え、有機質(タンパク質及び多糖体)は骨の強靭さを保っています。
関節

関節は、広い意味で骨と骨の連接全般を指しますが、複数の骨が互いに運動できるように連結したもの(可動関節)のことをいいます。
骨の関節面は弾力性に富む柔らかな軟骨層(関節軟骨)に覆われていて、衝撃を和らげたり、関節の動きを滑らかにしています。
関節周囲を包む膜(滑膜)は軟骨の働きを助け、その外側には靱帯は骨を連結し、関節部を補強しています。
筋組織

筋組織は、筋細胞(筋繊維)とそれらをつなぐ結合組織からなっていて、その機能や形態によって、骨格筋・平滑筋・心筋に分類されます。
このうち運動器官である骨格筋は、関節を動かす骨に腱を介してつながっています。
筋組織は筋細胞と結合組織からできているのに対して、腱は結合組織のみでできているため、伸縮性はあまりありません。
骨格筋

骨格筋は、筋線維を顕微鏡で観察すると横縞模様(横紋)が見えるので横紋筋と呼ばれています。
収縮力が強く、自分の意識どおりに動かすことができる随意筋ですが、疲れやすく、長時間の動作は難しいとされています。
骨格筋の疲労は、運動を続けることでエネルギー源として蓄えられているグリコーゲンが減少し、酸素や栄養分の供給不足が起こるのと同時に、グリコーゲンの代謝によって生じる乳酸が貯まって筋組織の収縮性が低下する現象です。
随意筋に対して、意識的にコントロールできない筋組織を不随意筋といい、平滑筋と心筋は不随意筋です。
平滑筋

平滑筋は、筋線維に骨格筋のような横縞模様がなく、消化管壁・血管壁・膀胱などに存在していて、比較的弱い力で持続的に収縮する特徴があります。
心筋は、心臓壁にある筋層を構成する筋組織で、不随意筋ですが、骨格筋のような横縞模様があって、強い収縮力と持久力を兼ね備えています。
筋組織は神経からの指令によって収縮しますが、随意筋(骨格筋)は体性神経系(運動神経)で支配されるのに対して、不随意筋(平滑筋と心筋)は自律神経系に支配されています。
ワンポイント解説
例えば、自分で心臓や肺の動きを止めることは出来ませんよね。
これは自分の意識ではなく、自律神経がコントロールしているからです。
例題
外皮系に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a)メラニン色素は、皮下組織にあるメラニン産生細胞(メラノサイト)で産生され、太陽光に含まれる紫外線から皮膚組織を防護する役割がある。
b)毛球の下端のへこんでいる部分を毛乳頭といい、毛乳頭には毛細血管が入り込んで、取り巻く毛母細胞に栄養分を運んでいる。
c)立毛筋は、気温や感情の変化などの刺激により収縮し、毛穴が隆起する立毛反射(い わゆる「鳥肌」)が生じる。
d)汗腺には、アポクリン腺とエクリン腺の2種類があり、アポクリン腺は手のひらなど毛根がないところも含め全身に分布する。
1(a、c) 2(a、d) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
解答 3
まとめ
いかがでしょうか。
今回は登録販売者試験第2章「皮膚・骨・筋肉・関節」について解答しました。
人体の構造や働きを知っていると、接客時にも説得力がアップしますので、ぜひ覚えておきましょう!

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