症状から見た副作用

医薬品は、十分注意して適正に使用された場合でも、副作用を生じることがあります。
一般に、重篤な副作用が発生頻度は低く、遭遇する機会は極めてまれです。
しかし、副作用の早期発見・早期対応のためには、登録販売者が副作用のに関する十分な知識を身に付けることが重要です。
厚生労働省では「重篤副作用総合対策事業」の一環として、関係学会の専門家などの協力を得て、 「重篤副作用疾患別対応マニュアル」を作成し、公表しています。
本マニュアルが対象とする重篤副作用疾患の中には、一般用医薬品によって発生する副作用も含まれていて、登録販売者は、購入者などへの積極的な情報提供や相談対応に、本マニュアルを積極的に活用することが望ましいでしょう。
また、登録販売者は、購入者等に対して、一般用医薬品による副作用と疑われる症状について受診勧奨する際に、当該一般用医薬品の添付文書などを見せて説明すると良いでしょう。
一般用医薬品による副作用は
- 長期連用
- 不適切な医薬品の併用
- 医薬品服用時のアルコール飲用
などが原因で起きる場合があり、医薬品を使用する時の状況に応じて適切な指導を行うことが重要です。
全身的に現れる副作用
ショック(アナフィラキシー)
ショック(アナフィラキシー)は、生体異物に対する即時型のアレルギー反応の一種です。
原因物質によって発生頻度は異なり、医薬品の場合、以前にその医薬品によって蕁麻疹などのアレルギーを起こしたことがある人で起きる可能性が高いといえます。
一般に、顔や上半身の紅潮や熱感、皮膚の痒み、蕁麻疹、ロ唇や舌・手足のしびれ感、むくみ (浮腫)、吐きけ、顔面蒼白、手足の冷感、冷や汗、息苦しさ・胸苦しさなど、複数の症状が現れます。
一旦発症すると、症状が急速に悪化することが多く、適切な対応が遅れるとチアノーゼや呼吸困難などを生じる死に至る場合があります。
発症後の進行が非常に速やかな(通常、2時間以内に急変する)ことが特徴であり、直ちに救急救命処置が可能な医療機関を受診する必要がありますが、何よりも医薬品の使用者本人と、その家族などの冷静沈着な対応が非常に重要です。
重篤な皮膚粘膜障害
皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)
皮膚粘膜眼症候群は、38°C以上の高熱を伴って、発疹・発赤・火傷など、水疱などの激しい 症状が比較的短時間のうちに全身の皮膚・口・眼などの粘膜に現れる病態で、最初に報告をした二人の医師の名前にちなんでスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)とも呼ばれています。
発生頻度は、人口100万人当たり年間1〜6人と報告されています。
発症機序の詳細は不明で、また、発症の可能性がある医薬品の種類も多いため、発症の予測は極めて困難です。
【難病情報センター】スティーヴンス・ジョンソン症候群(指定難病38)
中毒性表皮壊死融解症(TEN)
中毒性表皮壊死融解症は、38°C以上の高熱を伴って広範囲の皮膚に発赤が生じ、全身の10%以上に火傷などの水疱、皮膚の剥離、びらんなどが認められ、かつ、口唇の発赤、びらん、目の充血などの症状を伴う病態で、最初に報告をした医師の名前にちなんでライエル症候群とも呼ばれます。
皮膚粘膜眼症候群と関連のある病態と考えられていて、中毒性表皮壊死融解症の症例の多くが、皮膚粘膜眼症候群の進展型とみられています。
発生頻度は、人口100万人当たり年間0.4〜1.2人と報告されています。
皮膚粘膜眼症候群と同様に、発症を予測することは困難です。
皮膚粘膜眼症候群及び中毒性表皮壊死融解症のいずれも、発生は非常にまれであるとはいえ、一旦発症すると多臓器障害の合併症などに至ることがあります。
また、皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器などに障害が残ったりする重篤な疾患です。
従って
- 38°C以上の高熱
- 目の充血
- 目やに
- まぶたの腫れ
- 目が開けづらい
- 口唇の違和感
- 口唇や陰部のただれ
- 排尿・排便時の痛み
- 喉の痛み
- 広範囲の皮膚の発赤
などの症状が持続したり、急激に悪化したりする場合には、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、直ちに皮膚科の専門医を受診する必要があります。
特に、両眼に現れる急性結膜炎(結膜が炎症を起こし、充血、目やに、流涙、痒かゆみ、腫れ等を生じる病態)は、皮膚や粘膜の変化とほぼ同時期又は半日〜1日程度先行して生じることが知られているので、そのような症状が現れた時は、皮膚粘膜眼症候群又は中毒性表皮壊死融解症の前兆である可能性を疑うことが重要です。
皮膚粘膜眼症候群と中毒性表皮壊死融解症は、いずれも原因となる医薬品の使用開始後2週間以内に発症することが多いですが、1ヶ月以上経ってから起こることもあります。
肝機能障害
医薬品により生じる肝機能障害は、有効成分又はその代謝物の直接的な肝毒性が原因で起きる中毒性のものと、有効成分に対する抗原抗体反応が原因で起きるアレルギー性のものに大別されます。
軽度の肝機能の場合、自覚症状がなく、健康診断などの血液検査(肝機能検査値の悪化)で初めて判明することが多い。
主な症状に、全身の倦怠感や黄疸のほか、発熱、発疹、皮膚の掻痒感、吐き気などがあります。
黄疸とは、ビリルビン(黄色色素)が胆汁中へ排出されず血液中に滞留することにより生じる皮膚や白眼が黄色くなる病態です。
また、過剰となった血液中のビリルビンが尿中に排出されることにより、尿の色が濃くなることもあります。
肝機能障害が疑われた時点で、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、医師の診療を受けることが重要です。
漫然と原因と考えられる医薬品を使用し続けると、不可逆的な病変(肝不全)を生じて、死に至ることもあります。
偽アルドステロン症
体内に塩分(ナトリウム)と水が貯留し、体からカリウムが失われることによって生じる病態です。
副腎皮質からのアルドステロンの分泌が増加していないにもかかわらず、このような状態となることから、偽アルドステロン症と呼ばれています。
主な症状に、手足の脱力、血圧上昇、筋肉痛、こむら返り、倦怠感、手足の痺れ、頭痛、むくみ(浮腫)、喉の渇き、吐き気、嘔吐などがあり、さらに進行すると、筋力低下、起立不能、歩行困難、痙攣(けいれん)などを生じます。
低身長、低体重など体表面積が小さい者や高齢者で生じやすく、原因となる医薬品の長期服用後に初めて発症する場合もあります。
また、複数の医薬品や、医薬品と食品との間の相互作用によって起きることがあります。
初期症状に不審感を感じながらも重症化させてしまう例が多く、偽アルドステロン症が疑われる症状に気付いたら、直ちに原因と考えられる医薬品の使用を中止し、速やかに医師の診療を受けることが重要です。
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症」
病気などに対する抵抗力の低下など
医薬品の使用が原因で血液中の白血球(好中球)が減少し、細菌やウイルスの感染に対する抵抗力が弱くなって、突然の高熱、悪寒、喉の痛み、口内炎、倦怠感などの症状が現れる場合があります。
進行すると重症の細菌感染を繰り返して、致命症なることもあります。
ステロイド性抗炎症薬や抗癌薬などが、そのような易感染症をもたらすことが知られています。
初期においては、かぜなどの症状と見分けることが難しいため、原因となる医薬品の使用を漫然と継続して悪化させる場合があります。
医薬品 を一定回数又は一定期間使用した後に症状が出現したのであれば、医薬品の副作用の可能性を考慮して、その医薬品の使用を中止して、血液検査ができる医師の診断を受ける必要があります。
このほか、医薬品の使用が原因で血液中の血小板が減少し、鼻血、歯ぐきからの出血、手足の青あざ(紫斑)、口腔粘膜の血腫などの内出血、経血が止まりにくい(月経過多)などの症状が現れることがあります。
脳内出血などの重篤な病態への進行を予防するため、何らかの症状に気付いたときは、原因と考えられる医薬品の使用を直ちに中止して、早期に医師の診療を受ける必要があります。
精神神経系に現れる副作用
精神神経障害
医薬品の副作用によって中枢神経系が影響を受け、「物事に集中できない」「落ち着きがなくなる」などの他、不眠、不安、震え(振戦)、興奮、眠気、うつなどの精神神経症状を生じることがあります。
これらのうち、眠気は比較的軽視されがちですが、乗物や危険な機械などの運転操作中に眠気を生じると重大な事故につながる可能性が高いので、眠気を催すことが知られている医薬品を使用した後は、そのような作業に従事しないよう十分注意することが必要です。
精神神経症状は、医薬品の大量服用や長期連用、乳幼児への適用外の使用などの不適正な使用が
なされた場合に限らず、通常の用法・用量でも発生することがあります。
これらの症状が現れた場合は、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
無菌性髄膜炎
髄膜炎のうち、髄液に細菌が検出されないものをいいます。
大部分はウイルスが原因と考えられていますが、マイコプラズマ感染症やライム病、医薬品の副作用などによって生じることもあります。
医薬品の副作用が原因の場合、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、関節リウマ チなどの基礎疾患がある人で発症リスクが高い。
多くの場合、発症は急性で、首筋のつっぱりを伴った激しい頭痛、発熱、吐きけ・嘔吐、意識混濁などの症状が現れます。
これらの症状が現れた場合は、原因と考えられる医薬品の使用を直ちに中止し、医師の診療を受ける必要があります。
早期に原因となる医薬品の使用を中止すれば、速やかに回復 し、その後は比較的良好であることがほとんどですが、重篤な中枢神経系の後遺症が残った例も報告されています。
また、過去に軽度の症状を経験した人の場合、再度、同じ医薬品を使用することで再発し、急激に症状が進行する場合があります。
その他
心臓や血管に作用する医薬品により、頭痛やめまい、浮動感(体がふわふわと宙に浮いたような感じ)、不安定感(体がぐらぐらする感じ)などが生じることがあります。
これらの症状が現れた場合 は、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
このほか、医薬品を長期連用したり、過量服用するなどの不適正な使用によって、倦怠感や虚脱感などを生じることがあります。
登録販売者は、販売する医薬品の使用状況にも留意する必要があります。
消化器系に現れる副作用
消化性潰瘍
消化性潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜組織が傷付いて、粘膜組織の一部が粘膜筋板を超えて欠損する状態であり、医薬品の副作用により生じることも多い。
胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐きけ、胃痛、空腹時にみぞおちが痛くなる、消化管出血に伴って糞便が黒くなるなどの症状が現れます。
自覚症状が乏しい場合もあり、貧血症状(動悸や息切れなど)の検査時や突然の吐血・下血によって発見されることもあります。
重篤な病態への進行を防止するため、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、 医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
日本消化器病学会ガイドライン「消化性潰瘍ってどんな病気ですか?」
イレウス様症状(腸閉塞様症状)
イレウスとは腸内容物の通過が阻害された状態をいいます。
腸管自体は閉塞していなくても、医薬品の作用によって腸管運動が麻痺して腸内容物の通過が妨げられると、激しい腹痛やガス排出(おなら)の停止、嘔吐、腹部膨満感を伴う著しい便秘が現れます。
腹痛などの症状のために水分や食物の摂取が抑制され、嘔吐がない場合でも脱水状態となることがあります。
悪化すると、腸内容物の逆流による嘔吐が原因で脱水症状を起こしたり、腸内細菌の異常増殖によ って全身状態の衰弱が急激に進行する可能性があります。
小児や高齢者のほか、普段から便秘傾向のある人は、発症のリスクが高いと言われています。
また、下痢が治った後の便秘を放置して、症状を悪化させてしまうことがあります。
いずれにしても初期症状に気付いたら、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、早期に医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
その他
消化器に対する医薬品の副作用によって、吐きけ・嘔吐、食欲不振、腹部(胃部)不快感、腹部(胃部)膨満感、腹痛、口内炎、口腔内の荒れや刺激感などを生じることがあります。
これらの症状が現れたときには、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
医薬品によっては、一過性の軽い副作用として、口渇、便秘、軟便、下痢などが現れることがあります。
また、浣腸剤や坐剤の使用によって現れる一過性の症状に、肛門部の熱感などの刺激、 異物の注入による不快感、排便直後の立ちくらみなどがあります。
添付文書などには、それらの症状が継続したり、症状に増強が見られた場合には、その医薬品の使用を中止して、専門家に相談するよう記載されています。
呼吸器系に現れる副作用
間質性肺炎
通常の肺炎が気管支、又は肺胞が細菌に感染して炎症を生じたものであるのに対し、間質性肺炎は肺の中で肺胞と毛細血管を取り囲んで支持している組織(間質)炎症を起こしたも のです。
間質性肺炎を発症すると、肺胞と毛細血管の間のガス交換率が低下します。
そして血液に酸素を十分取り込むことができず、体内は低酸素状態となります。
そのため、息苦しさや息切れなどの呼吸困難や空咳(痰の出ない咳)、発熱の症状を発します。
一般的に、医薬品の使用開始から1〜2週間程度で起きることが多いと言われています。
息切れは、初期に登り坂を歩いている時に感じられますが、症状が進行すると平地を歩いていたり、家事をしている時などにも感じるようになります。
また、必ずしも発熱が伴うわけではありません。
これらの症状は、かぜや気管支炎の症状と区別が難しいこともあり、細心の注意を払ってそれらとの鑑別が行われています。
症状が一過性に現れ、自然と回復することもあるが、悪化すると肺線維症(肺が線維化を起こして硬くなる状態)に移行することがあります。
重篤な病態への進行を防止するため、直ちに原因と考えられる医薬品の使用を中止して、速やかに医師の診療を受ける必要があります。
喘息
喘息の原因となる医薬品(アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症成分を含む解熱鎮痛薬など)の使用後、短時間(1時間以内)うちに鼻水や鼻詰まりが現れ、続いて咳、喘鳴(息するとき喉がゼーゼー又はヒューヒュー鳴る)及び呼吸困難を生じます。
これらの症状は時間とともに悪化し、顔面の紅潮や目の充血、吐きけ、腹痛、下痢等を伴うこともあります。
内服薬のほか、坐剤や外用薬でも誘発されることがあります。
合併症を起こさない限り、原因となった医薬品の有効成分が体内から消失すれば症状は治ります。
軽症の場合は半日程度で回復しますが、重症例は24時間以上持続し、窒息で意識消失から死に至る危険もあります。
そのような場合には、直ちに救命救急処置が可能な医療機関を受診する必要があります。
通年性(非アレルギー性)の鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)鼻茸(鼻ポリープ)嗅覚異常など、鼻の疾患を合併している人や、成人になってから喘息を発症した人、季節に関係なく喘息発作が起こる人などは発症しやすい。
特に、これまでに医薬品(内服薬に限らない)で喘息発作を起こしたことがある人は重症化しやすいので、同種の医薬品の使用を避ける必要があります。
循環器系に現れる副作用
うっ血性心不全
うっ性心不全とは、全身が必要とする量の血液を心臓から送り出すことができなくなり、肺に血液が溜まって、いくつかの症状を現す疾患です。
息切れ、疲れやすい、足のむくみ、急な体重の増加、咳とピンク色の痰などの症状が見られた場合は、鬱血性心不全の可能性を疑い、早期に医師の診療を受ける必要があります。
また、心不全の既往がある人は、薬剤による心不全を起こしやすいと言われています。
不整脈
一方、不整脈とは、心臓の拍動リズムが乱れる症状で、めまい、立ちくらみ、全身のだるさ(疲労感)、動悸、息切れ、胸部の不快感、脈の欠落などの症状が現れます。
これらの症状が現れたときは、直ちに原因と考えられる医薬品の使用を中止して、速やかに医師の診療を受ける必要があります。
不整脈の種類によっては失神(意識消失)することもあります。
そのような場合は、生死に関わる危険な不整脈を起こしている可能性があるので、自動体外式除細動器(AED)の使用を考慮するとともに、直ちに救急救命処置が可能な医療機関を受診する必要があります。
また、代謝機能の低下によって発症リスクが高まることがあるので、腎機能や肝機能の低下、併用薬との相互作用等に留意するべきです。
特に、高齢者はそのような配慮が重要です。
登録販売者においては、医薬品を使用する本人だけでなく、その家族などもあらかじめ注意を促しておく必要があります。
その他
高血圧や心臓病など、循環器系疾患の診断を受けている人は、心臓や血管に悪影響を及ぼす可能性が高い医薬品を使用してはいけません。
また、使用禁忌となっていなくても、使用しようとする人の状態などに応じて使用の可否を慎重に判断すべき医薬品は、使用上の注意の「相談すること」の項で注意喚起がなされています。
これらの点に留意して医薬品を適正に使用した場合であっても、動悸(心悸亢進)や一過性の血圧上昇、顔のほてりなどを生じることがあります。
これらの症状が現れたときには、重篤な病状への進行を防止するため、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
泌尿器系に現れる副作用
腎障害
医薬品の使用が原因となって、腎障害を生じることがあります。
尿量の減少、ほとんど尿が出ない、逆に一時的に尿が増える、むくみ(浮腫)倦怠感、発疹、吐きけ・嘔吐、発熱、尿が濁る・赤みを帯びる(血尿)などの症状が現れたときは、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、速やかに医師の診療を受ける必要があります。
排尿困難・尿閉
副交感神経系の機能を抑制する作用がある成分が配合された医薬品を使用すると、膀胱の排尿筋の収縮が抑制されて、尿が出にくい、尿が少ししか出ない、残尿感があるなどの症状を生じることがあります。
これが進行すると、尿意があるのに尿が全く出なくなったり(尿閉)や下腹部が膨満して激しい痛みを感じるようになります。
これらの症状は前立腺肥大などの基礎疾患がない人でも現れることが知られていて、男性に限らず女性においても報告されています。
初期段階で適切な対応が図られるように、尿の勢いの低下などの兆候に留意することが重要です。
上記のような症状が現れたときには、原因と考えられる医薬品の使用を中止します。
多くの場合、原因となる医薬品の使用を中止することにより症状は速やかに改善しますが、医療機関での処置を必要とする場合もあります。
膀胱炎様症状
尿の回数増加(頻尿)、排尿時の疼痛、残尿感などの症状が現れます。
これらの症状が現れた時は、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
感覚器系に現れる副作用
眼圧上昇
眼球内の角膜と水晶体の間を満たしている眼房水排出されにくくなると、眼圧が上昇して視覚障害を生じることがあります。
例えば、抗コリン作用がある成分が配合された医薬品によって眼圧が上昇し(急性緑内障発作)、眼痛や眼の充血に加え、急激な視力低下を起こすことがあります。
特にアスピリンなどの非ステロイド性抗炎症成分を含む解熱鎮痛薬など)緑内障がある人では厳重な注意が必要です。
眼圧の上昇に伴って、頭痛や吐きけ・嘔吐などの症状が現れることもあります。
高眼圧を長時間放置すると、視神経が損傷して視覚障害(視野欠損や失明)に至るおそれがあり、速やかに眼科専門医の診療を受ける必要があります。
その他
医薬品によっては、瞳の拡大(散瞳)による異常な眩しさや目のかすみなどの副作用が現れることがあります。
眠気と同様に、そのような症状が乗物や機械などの運転操作中に現れると重大 な事故につながるおそれがあるので、散瞳を生じる可能性のある成分が配合された医薬品を 使用した後は、そうした作業は避けなければいけません。
皮膚に現れる副作用
接触皮膚炎・光線過敏症
化学物質や金属などに皮膚が反応して、強いかゆみを伴う発疹・発赤、腫れ、刺激感、水疱・ただれなどこ激しい炎症症状(接触皮膚炎)や色素沈着、白斑など生じることがあります。
一般的に「かぶれ」と呼ばれる日常的に経験する症状ですが、外用薬の副作用で生じることもあります。
接触皮膚炎は、いわゆる「肌に合わない」という状態であり、外来性の物質が皮膚に接触することで現れる炎症です。
同じ医薬品が触れても発症するか否かはその人の体質によっ て異なります。
原因となる医薬品と接触してから発症するまでの時間は様々ですが、接触皮膚炎は医薬品が触れた皮膚の部分にのみ生じ、正常な皮膚との境目がはっきりしているのが特徴です。
アレルギー性皮膚炎の場合は、発症部位は医薬品の接触部位に限定されません。
症状が現れたときは、重篤な病態への進行を防止するため、原因と考えられる医薬品の使用を中止します。
通常は1週間程度で症状は治まりますが、再びその医薬品に触れると再発します。
かぶれ症状は、太陽光線(紫外線)曝さらされて初めて起こることもあります。
これを光線過敏症といいます。
その症状は医薬品が触れた部分だけでなく、全身へ広がって重篤化する場合があります。
貼付剤の場合は剥がした後でも発症することがあります。
光線過敏症が現れた場合は、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、皮膚に医薬品が残らないよう十分に患部を洗浄し、 遮光(白い生地や薄手の服は紫外線を透過するおそれがあるので不可)して速やかに医師の診療を受ける必要があります。
薬疹
医薬品によって引き起こされるアレルギー反応の一種で、発疹や発赤などの皮膚症状を現す場合をさします。
あらゆる医薬品で起きる可能性があり、同じ医薬品でも生じる発疹の型は人によって様々です。
赤い大小の斑点(紅斑)や、小さく盛り上がったた湿疹(丘疹)のほか、水疱を生じることもあります。
蕁麻疹は強い痒みを伴いますが、それ以外の場合は痒みがないか、たとえあったとしてもわずかなことが多い。
皮膚以外に、眼の充血や口唇・口腔粘膜に異常が見られることもあります。
特に、発熱を伴って眼や口腔粘膜に異常が現れた場合は、急速に皮膚粘膜眼症候群や、中毒性表皮壊死融解症などの重篤な病態へ進行することがあるので、厳重な注意が必要です。
薬疹は医薬品の使用後1〜2週間で起きることが多いですが、長期使用後に現れることもあります。
アレルギー体質の人や以前に薬疹を起こしたことがある人は生じやすいですが、それまで薬疹を経験したことがない人でも、暴飲暴食や肉体疲労が原因となって現れることがあります。
医薬品を使用した後に発疹や発赤などが現れた場合は、薬疹の可能性を考慮すべきです。
その場合、重篤な病態への進行を防止するため、原因と考えられる医薬品の使用を直ちに中止します。
痒みなどの症状に対して、一般の生活者が自己判断で対症療法を行うことは、原因の特定を困難に するおそれがあるため、避けるべきです。
多くの場合、原因となる医薬品の使用を中止すれば、症状は次第に改善します。
ただし、以前に薬疹を経験したことがある人が再び、同種の医薬品を使用するとショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症などのより重篤なアレルギー反応を生じるおそれがあるので、同種の医薬品の使用を避ける必要があります。
その他
外用薬の使用部位(患部)に生じる副作用としては、含有される刺激性成分による痛み、灼熱感(ヒリヒリする感じ)、熱感、乾燥感などの刺激感、腫れなどがあります。
また外用薬には、感染を起こしている患部には使用を避けることとされているものがありますが、感染の初期段階に気付かずに使用して、みずむし・たむしなどの白癬症、にきび、化膿症状、持続的な刺激感などを起こす場合があるので注意が必要です。
いずれの場合も、重篤な病態への進行を防止するため、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要である。
副作用情報等の収集と報告
法第68条の10第2項の規定に基づき、登録販売者は、医薬品の副作用等を知った場合において、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならないとされており、実務上は決められた形式に従い報告書を独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出することとなります。
一般用医薬品においても毎年多くの副作用が報告されており、市販後も医薬品の安全性を継続的に確保するために、専門家により多くの情報が収集され医薬品の安全性をより高める活動が続けられています。
まとめ
いかがでしょうか。
今回は登録販売者試験・第2章「症状から見た副作用」をまとめました。
登録販売者の重要な役割の一つに受診勧奨があります。
そのためには判断する基準を知っておく必要があります。
実務にあたる際には是非覚えておいてくださいね♪

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