登録販売者として医薬品販売に携わっていると
「医療用医薬品はどうやって出来るの?」
「どれくらい時間がかかるの?」
と思ったことはありませんか?
OTC医薬品はすでに承認・使用されている成分を組み合わせで出来るものがほとんどなので、新商品の開発にそれほど時間やお金はかかりません。
しかし医療用医薬品の新薬を研究・開発の場合は全く異なり、多額のお金と長い時間がかかります。
しかも、それが必ず新薬開発に結び着くとは限らず結果として空振りに終わることもあります。
今回はそんな新薬の研究・開発についてまとめてみました。
登録販売者として知っておくとお客様に
「さすがに薬屋さんは詳しいのね」
「あなたは薬のことよく勉強してるのね」
と一目おかれる存在になれるでしょう。
新薬の研究・開発の現状
世界中の大手製薬企業は新薬の研究・開発に日夜しのぎを削っています。
新薬の研究・開発には多額の費用と優秀な人材、最高の設備が必要なため、資金力に余裕がある欧米の大手製薬企業が世界をリードしているのが現状です。

そんな新薬研究開発の世界では、世界中で販売される画期的な新薬のことをピカ新(ピカッと光る新薬という意味)と呼ばれ、そんなピカ新を開発出来れば会社の業績は一気に跳ね上がります。
それこそ前年の売上高をそのピカ新のみの売上が上回ることもあるくらいです。
薬ができる工程
基礎研究

新薬を作るためにはその材料となる物質を見つけることから始めます。
動植物や鉱石などの天然素材やバイオテクノロジーを利用して出来た化合物などから材料になりそうなものを探します。
この工程に約2〜3年かかります。
インフルエンザの特効薬として注目を浴びたタミフルの原材料は中華料理の杏仁豆腐や北京ダックに使われる八角だと報道された時に八角の売上が上がったということがありました。
候補をしぼる
各製薬企業には長年よ研究によって、新薬の材料になる候補の物質は大量に保管されています。
その中から候補を絞って試験と検証を繰り返します。
その中で安全性や有効性の高いものを選び出して非臨床試験に進みます。
非臨床試験

次に候補物質を薬として効果があるのか、その有効性と安全性を動物や細胞を用いて確認します。
この非臨床試験に約3〜5年の期間がかかります。
この非臨床試験とは臨床試験(=人体への投薬)を行わないのでそう呼ばれます。
この非臨床試験は以下の4つの工程があります。
薬効薬理試験
薬効薬理時間は薬として効果があるかを確認する試験です。
薬の使用方法や効果が発揮されるために必要な量を調べたり、検証に最も適した試験方法について検討されます。
その際は環境や条件を変えて繰り返し行われます。
安全性試験
安全性試験では副作用などの有害な事象が起きないかを確認します。
- 細胞や生理機能化への作用
- 発癌性の有無
- 毒性の有無
などを確認し、問題があれば改良すると言った工程を繰り返します。
薬は効き目と同時に安全性も大切だからです。
物性試験
物性試験は薬が体内で実際に効果を発揮するか、医療現場で安心して使用出来るかなどを確認します。
例えば
- 水や脂に溶けるか
- 温度や湿度の変化に耐えられるか
などを確認します。
薬物動態試験
体内に薬の候補である物質が入ってから、体外に排出されるまでの過程を確認します。
それは体内への吸収が悪かったり、代謝が良すぎると薬として効果を発揮しにくいからです。
さらに他の医薬品との相互作用も検証してより高い安全性と効果を発揮出来るように改良していきます。
臨床試験(治験)

人体への有効性や安全性を確認するためには臨床試験が必要不可欠です。
同意を得た治験ボランティアに投薬を実施してデータを集めて医薬品として販売出来るかを確認します。
その際、ボランティアの方には謝礼が支払われます
この臨床試験は3段階に分かれています。
フェーズⅠ
抗がん剤など一部の薬を除き、少人数の健康な成人に対して投薬が行われます。
少量から少しずつ量を増やしていたったり、一定量を定期的に投与する方法が一般的です。
血液や尿などに含まれる物質の量から体内への吸収時間と排泄時間を調べて、安全性と有効性を確認します。
フェーズⅡ
この段階は前期と後期に分けられます。
少人数の比較的症状の軽い患者さんを対象にして適応するしっかんの範囲や適切な用法用量を調べるのが前期試験です。
次に数百人の患者さんを対象に有効性や副作用などについて調べるのが後期試験になります。
前期試験から後期試験にかけては徐々に投薬量を増やしていいます。
それは複数の用量で時間をかけて投薬量を調整しながらどの用法用量が最適なのかを調べていきます。
またこの段階では薬の効果を確認するためにプラセボも使用されます。
フェーズⅢ
この段階では数百人〜数万人の規模で行います。
実際の治療を想定した投与を行い、最終的な有効性や安全性と、用法用量を確認します。
またこの段階では対象となる疾患いかいに合併症を抱える患者さんを対象にしたり、長期的な試験を行うこともあります。
さらにバイアスがかからないように医師も患者さんにも投薬される薬が治験薬かプラセボか分からないようにする二重盲試験が行われる場合もよくあります。
承認制申請

臨床試験で有効性や安全性などが確認出来たら、承認申請を厚生労働省に行います。
実際の審査は医薬品医療機器総合機構(PMDA)によって行われ、その後に薬事・食品衛生審議会で審議されます。
これらを経て医薬品として販売承認が得られると製造と販売が可能になります。
安心・安全のためのルールGMPとは?

GMPは医薬品の製造や販売を担う業者や臨床試験を行う医療機関に対する「製造管理や品質管理の基準に関する省令」のことです。
患者さんに安心・安全な医薬品を安定供給するために細かいルールが定められています。
GMPを理解する上で重要な考え方としてGMPの三原則があります。
日本のGMPをはじめ、諸外国のGMPもこの要件にまとめられています。
GMPの三原則
1. 人為的な誤りを最小限にすること
2. 医薬品の汚染及び品質低下を防止すること
3. 高い品質を保証するシステムを設計すること
まとめ
今回は新薬の研究・開発についてお伝えしました。
新薬の研究・開発には約10〜20年の時間と数百億〜数千億円の費用という膨大な時間も費用もかかります。
現在、新薬の開発分野では豊富な資金力と人材を有する欧米企業が世界をリードしていますが、是非日本企業にも世界で役に立つピカ新を開発して欲しいですね。
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